◆ 雨水タンクは、どう選べば良いのか?
雨の日に、水をためておいて、それをガーデニングや洗車、初期消火用水などに使える、家庭用の「雨水タンク」というものがあります。
これは、雨水をリサイクルし、雨資源を有効活用して、環境対策を行いながら、水道代も節約できるというすぐれものです。
しかし、いざ購入しようとなると、大きさ、価格、各部の規格などを見ても、何を主に考えて選んでよいものか、なかなか迷うものです。
なぜなら、雨水タンクは、ある程度の場所を取り、値段も、安いものでも10,000円くらいはかかり、初めて取り付ける人にとっては、結構不安を覚える「雨どいを切る」作業が必要だからです。(※雨どいを切るのは、やってしまえばカンタンです。また、雨どいに取り付けないタイプの商品も、僅かですがあります)
商品の選択で失敗したら、多分後悔が大きいだろうと思ってしまいますよね。
ここでは、雨水タンク本来の目的、メリット、デメリットを明らかにし、商品の性能比較を行います。雨水タンク購入の検討に役立てていただければと思います。
※ このページで紹介するのは、家庭用の、特に水の浄化システムの付いていないもののみとなります。よって、飲用にできる水が取れるものは扱いません。また、トイレの排水に使えるものも、巨大タンクとなりますので、こちらでは紹介いたしません。
【目次】
●雨水タンクの目的
家庭用の雨水タンクは、シンプルに雨水をためて、それを、タンクについている蛇口から出すだけのものですので、飲料水にはなりませんし、お風呂にも使えません。
もっとも一般的な使い道は、ガーデニング・家庭菜園の水やり、池の水、打ち水、洗車、防火用水、などです。
●雨水タンクのメリット
- 環境対策になる(水不足対策、雨水の流出抑制対策、水の健全な循環につながる)
- 公的助成金制度がある
- 水道代の節約になる
- 雨水は、塩素を含まないので、植物や池の生物にやさしい
●雨水タンクのデメリット
もしも、親しい方で、雨水タンクを使用している方がいる場合は、可能であれば、実物を見せてもらうと良いと思います。
雨水タンクは、実物が家に来ると、「
思いのほか大きい」と感じる人が多いので、どのくらいの迫力があるものか、一度見ておくと大いに参考になります。
ほとんどの雨水タンクは、雨水を雨どいから取ります。(少数ですが、屋根の無いところに置いたタンクに、直接雨水を貯めるものもあります)ですので、何らかの方法で、雨どいから分岐する管を作らねばなりません。
通常、雨水タンクの説明書には、「手持ちのパイプノコで切ってください」(最近は、パイプノコは100円ショップにもあります)と書いてあり、ワンタッチで分岐できるような便利工具は、今のところ見られません。
これは、初めて設置しようとするときには、正直、非常におっくうです。どうしても、「失敗しそう」という不安が先に立つものです。
しかし、やってみると意外に簡単なので、恐れるほどではありません。
第一、失敗者が続出するような作業なら、商品のほとんどが「購入者自己工事」で出回っているわけはないのです。
心配なら、日曜大工程度の作業に慣れている知人の方などに相談してみると良いと思います。マメな人なら、設置を手伝いに来てくれるかもしれませんし、大抵の方が「雨どい切るくらい、誰でもできるよ」と言ってくれると思います。
それでも、本当に心配なら、プロに頼みましょう。ただし、お金はかかります。なじみの工務店とか、水道工事屋さんがあれば、安くできないか交渉してみましょう。
家庭用の雨水タンクは、基本的に「設置が簡単」と考えて大丈夫なものです。
雨どいカットの他には、壁に穴を開けるとか、ボルトで留めつけるなどの工事は、必要無いものがほとんどです。
雨どいカットも、「ノコギリ一本で簡単にできる!」と、メリットとして売っている販売店もあるのです。実際に切ってみると、「何をおっくうがっていたんだろう」と思いますよ。
雨どいにも、規格があります。雨水タンクを購入する際には、雨どいの規格は、必ず確認する必要があります。
雨水タンクは、雨どいを、直接切るなどしてタンクにつながるホースを付けますので、ご自宅の雨どいの規格に、商品が取り付け可能か確認しましょう。
万が一、規格が違っていることに気づかずに、雨どいを切ってしまった場合、素人仕事で、むりやり不恰好にタンクと雨どいをつなぐこともできなくは無いですが、タンクをいためることにもなりかねませんので、おすすめはできません。最悪、雨どいの修理代がかかってしまいうことも考えられますので、注意が必要です。(異経ソケットを購入すれば、直径の規格が違うタンクを接続することもできるのですが、自己責任の世界になります)
一般家庭用の雨どいの種類は、ごく限られています。
ほとんどは、丸樋で、直径55ミリか、60ミリです。角樋のものもありますが、かなり少ないです。したがって、雨水タンクの規格も、丸樋対応が多く、角樋対応が少なくなっています。
つまり、角樋に付けようという方は、最初から選択肢が少ないです。(角樋に、丸樋対応の雨水タンクをつなげるための部品を、下記の【参考2】で紹介しています。
反対に、丸樋で55ミリか60ミリの方は、ほとんどの商品が対応しているので、それだけでは絞りようがありません。
【参考 1】
雨水タンク 製品比較……対応している雨どいの種類も比較項目に入っています。
【参考 2】角樋を「丸樋対応」の雨水タンクにつなぐことができる製品です。
雨水タンク用 角どいジョイント継ぎ手 2個入
ゴム製で鋏で切れます。直径別のカットポイントが分かりやすく示されている継ぎ手です。(つまり、自分の家の樋が「角:直径50」であれば、「50」のところで切って樋に装着する、ということです)
場合によっては、このような別売りの継ぎ手の使用も検討してみましょう。
雨水タンクの適正容量を選ぶポイントを解説します。
雨水タンクの最少の容量は、現状では50Lのようです。最大は、特別な工事が必要でないものでは、500Lくらいです。
消費するときのことを考えると、洗車など、大量に使う場合には、500Lでも、決して多すぎる量ではありません。打ち水なども、広範囲に使うと、思いのほか多くの量の水を使うのです。それに、もしものときの初期消火用に、と考えるなら、いくらあっても多すぎることはありません。
しかし、問題は、容量が増えるほど、タンクが大型になり、確実に邪魔になることです。
余裕のあるお庭の家なら良いですが、狭い庭だと、通路がふさがってしまうことなども考えられます。なので、まずは、本体を設置する場所を確認し、そこに置ける大きさをはじき出すのが現実的な方法かと思います。(タンクと雨どいをつなぐパイプは、大抵70cm程度です。延長器具も特にありませんので、タンクは、雨どいのすぐ隣に設置するものと考えてください)
私の見たところ、どの家でも、お庭の中で目障りにならず、邪魔にならない大きさというのは、50〜80L程度ではないかと思われます。(日本、狭いですからね……)
しかし、大は小を兼ねるということもありますので、大きいものを置ける余裕があるなら、100L、200Lのものを、積極的に検討する価値があると思います。
もしも、雨水タンクの容量を、使用後に変更したくなった場合、タンクを縮小させることは不可能ですが、増設することなら可能なものが多数あります。
連結タンクと言って、例えばミツギロン(大手です)の50Lの雨水タンクを、↓
ミツギロン 雨水タンク 50L EG-24
↑これを買い、しばらく使ってから、「もう50L増やしたい」と思えば、連結用タンクを↓
ミツギロン 雨水タンク 50L 連結用 EG-25
↑これを買って、接続すればよいのです。結果的には↓
↑こういうことになります。
上の例のように、連結用タンクは、先に設置したタンクの隣に、もう一つ設置することになりますので、そのスペースが必要になります。
増設可能なものをあらかじめ選定するのも、一つの方法かと思います。
【参考】
雨水タンク 製品比較……連結可能かどうかも、比較項目に入っています。
雨水タンクの形状は、大きく分けると、「縦長型」と「横長型」の二つになります。
「縦長型」は、↓のようなもの
【雨水利用・雨水タンク】アクアリゾット Be Green 英国製雨水タンク200L
「横長型」は、↓のようなものです。
ミツギロン 雨水タンク 50L<EG-24>
中間のタイプでとして、↓のようなものもあります。
タキロン雨水貯留タンク 雨音くん [架台なし] 120リットル
これは、タンクを置くスペースによって選ぶのが、もっとも現実的です。
しかし、現状では、横長型は80Lまでのものにほとんど限られており、100Lを超えるものは、ほぼ「縦長型」とお考えください。
縦長だと、高さが1mを超えるあたりから、物体として人に与える圧迫感が大きくなり、「ちょっと邪魔」「大きすぎる」と感じる人が増えるようです。
縦横はどちらでもいいが、あまり無愛想なタンクがあるのは好みに合わない、という方は、値段は少々高くなりますが、下記のような、見た目重視のタンクを選ぶと良いと思います。
アンティークアンフォラ260リットル ※半円型 サンド グローベン 雨水タンク
樹脂製でテラコッタ風のもの、または、ハンドメイドのテラコッタ製のものなどは、ロマンチック系のガーデニングで演出したお庭にも馴染み、かえって雰囲気が出るでしょう。
アーティフィシャルバレル ウィリアム240HL 架台付 【雨水タンク】【雨水利用タンク】
アンティーク風の、樽を模した製品もあります。(本物のアンティーク樽を利用した、リサイクルタンクもあります)
和風のお庭にあう、信楽焼きの雨水タンクもあります。
信楽焼雨水タンク 信楽くん
個人的には、シンプルに直線的なフォルムのタンクが、「家の壁の一部っぽい」感じで良いように思います。
雨水タンク ノーブル 取水器+蛇口セット
雨音くんミニ
●容量 80L ●サイズ(幅×奥行×高 cm) 80×35×41.5 ●対応雨どい 「丸55・丸60」または「丸60」※付属の継ぎ手によります ●内部の洗浄 可 ●連結 不可
⇒
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ハーコスター社雨水タンク100Lセット
●容量 100L ●サイズ(幅×奥行×高 cm) 38×38×94 ●対応雨どい 丸:60〜100 角:〜60 ●内部の洗浄 可能だが、本体を倒す必要あり ●連結 可
※タンク、レイントラップ、スタンド、オーバーフローキットのセット商品。それぞれ単体での販売もあります
※連結にはリンキングキットが必要
⇒
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あめリサイクラー 100L
●容量 100L ●サイズ(幅×奥行×高 cm) 60×40×60 ●対応雨どい 丸55・丸60・角60 ●内部の洗浄 可 ●連結 不可 ※見た目が非常にシンプル
⇒
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ホームダム 110L
●容量 110L ●サイズ(幅×奥行×高 cm) 65×40×60.5 ●対応雨どい 丸55〜75・角60
●内部の洗浄 不可 ●連結 可 ※雨といの、右にも左にも接続可能
⇒
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雨音くん 150L
●容量 150L ●サイズ(幅×奥行×高 cm) 64.5×40×80 ●対応雨どい 丸55・丸60・角60 ●内部の洗浄 可 ●連結 不可
※架台有りと無しがあります
※接続パイプの長さ=70cm
⇒さらに詳しく
雨音くん 200L
●容量 200L ●サイズ(幅×奥行×高 cm) 73.6×49.8×110 ●対応雨どい 丸55・丸60・角60 ●内部の洗浄 可 ●連結 不可 ※接続パイプの長さ=70cm
⇒
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ハーコスター 227L
●容量 227L ●サイズ(幅×奥行×高 cm) 60×60×96 ●対応雨どい 丸&角:60〜100 ●内部の洗浄 可能だが、本体を倒す必要あり ●連結 可
※接続パイプの長さ=70cm
※連結には、リンキングキットが必要
⇒
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ホームダム 250L
●容量 250L ●サイズ(幅×奥行×高 cm) 75×51×117 ●対応雨どい 丸55〜60・丸76(角用部品もあり) ●内部の洗浄 可 ●連結 可
⇒
さらに詳しく
色々な木樽風雨水タンク(作り物の樽)
※この項目は、各メーカーの樽風の雨水タンク全体の傾向を紹介しております(特定の商品のデータではありません)詳しい仕様については、各商品の紹介ページをご覧ください
※本物の樽ではなく、
プラスチックなどで樽風に作ったものです
●容量 50Lくらい〜500Lくらい ●サイズ(幅×奥行×高 cm) 中心の胴回り50cm〜 ●対応雨どい 商品により異なります ●内部の洗浄 商品により異なります ●連結 商品により異なります
(でも、
見たこと無いです)
色々なウイスキー樽タイプ
※この項目は、各メーカーの樽利用雨水タンク全体の傾向を紹介しております(特定の商品のデータではありません)詳しい仕様については、各商品の紹介ページをご覧ください
※手作り樽(
ウイスキー樽の再利用品)のため、容量に少々の差があります
●容量 250〜500Lくらい ●サイズ(幅×奥行×高 cm) 中心の胴回り70cm〜 ●対応雨どい 商品により異なります ●内部の洗浄 商品により異なります ●連結 商品により異なります
(でも、
見たこと無いです)
色々なテラコッタ風雨水タンク(樹脂製)
※この項目は、各メーカーのテラコッタ風雨水タンク全体の傾向を紹介しております(特定の商品のデータではありません)詳しい仕様については、各商品の紹介ページをご覧ください
※
本物のテラコッタではなく、樹脂でテラコッタ風に作ったものです
※アンティークな壷を模ったものが多いです
●容量 250L〜 ●サイズ(幅×奥行×高 cm) 形状により異なる ●対応雨どい 商品により異なります ●内部の洗浄 商品により異なります ●連結 商品により異なります
(でも、
見たこと無いです)
色々なテラコッタ製タイプ
※この項目は、各メーカーのテラコッタ製雨水タンク全体の傾向を紹介しております(特定の商品のデータではありません)詳しい仕様については、各商品の紹介ページをご覧ください
※ハンドメイドのものは、個々のサイズが多少異なります
※日本の一般的な家庭の庭にもっとも溶け込むのは、意外にこのタイプかもしれません
●容量 70L〜 ●サイズ(幅×奥行×高 cm) 形状により異なる ●対応雨どい 商品により異なります ●内部の洗浄 商品により異なります ●連結 商品により異なります
(でも、
見たこと無いです)
色々な信楽焼タイプ
※この項目は、各メーカーの樽タイプの雨水タンク全体の傾向を紹介しております(特定の商品のデータではありません)詳しい仕様については、各商品の紹介ページをご覧ください
※和風の庭に馴染みます
●容量 50L前後が主流 ●サイズ(幅×奥行×高 cm) 形状により異なる ●対応雨どい 丸60が主流 ●内部の洗浄 ほぼ可能 ●連結 商品により異なります
(でも、
見たこと無いです)
一度雨水タンクを設置した人は、その後雨水タンクを増設するということが非常によくあります。
最初の一つを使ってみて、「もっとためて、もっと使おう」という気持ちになるので二つ目を購入する、ということのようです。
一度勇気を出して雨どいを切ったら、あとはためらう理由がなくなる、ということでもあるのかもしれません。
私の見てきた範囲では、個々の商品への文句、つっこみ、自分の選択方法の後悔をいう人はぽつぽついても、「雨水タンクを使ったために、雨水タンク否定派になった」という人はいません。
また、「もっと早く買えば良かった」という人が多い商品であり、リピーターが多い商品でもあります。
雨水タンクから水を出すのは、特に仕掛けを作らない限りは、「容器に溜まった水を、その容器の下の方にあけた水の出口から外に出すだけ」です。なので、水道のように勢い良く水が出てくるわけではありません。ただ、引力で水が下に流れるだけです。
私たちは、普段、蛇口をひねると水が出てくる「水道」の感覚に慣れているので、初めて雨水タンクから水を取った人は、ほとんど「出てくるの遅いなあ」と思うはずです。
しかし、こういうものだと思って使うか、自分でポンプを組み込むなどして工作するか、どちらかしかありません。
何も工作しないで、そのまま使うなら、水をジョウロやバケツに移して使います。雨水タンクについているコックにホースをつないでも、勢い良く水が出ないので、ほぼ意味がありません。