◆花鋏「菊一文字」

花鋏「菊一文字」

 画像のはさみは、私の相棒「菊一文字」君です。私が一番大事にしている花鋏です。私はこの鋏を、「指導」と「作品制作」のときにしか使いません。自分の練習用や、花屋業務には、花屋さん鋏(=坂源のハンドクリエーション)を使っています。


 この鋏の値段は、1万2〜3000円だったと思います。刃がなまったら、研ぎなおして、一生使おうと思っています。
 この鋏を選んだポイントは、
●毎日持ち歩くのにストレスにならない軽さ
●適正な刃の長さ(自分基準があります)
●水に強く、激しい業務にも耐えるステンレス製
●握ったときに、違和感が無い
 以上の4つです。どれか一つでも不満があれば、私はその鋏を選びません。最後の握ったときの違和感を試すために、私は絶対に店頭で「箱から出して、持たせて欲しい」とおねがいします。

 刃物に詳しい方なら知っているかもしれませんが、「菊一文字」とは、刃物の有名店です。⇒菊一文字公式サイト
 本店は京都にあり、東京にも神田に店舗があります。(私が鋏を買ったのは神田店舗です)菊一文字は、もともと刀匠が開いたもので、売りは何と言っても切れ味です。

 「起源は刀鍛冶」ということは、現在も日本刀を作っていると思うのですが、私は菊一文字の店で刀を見たことはありません。お店のサイトにも掲載されていないので、「特注品」みたいなものだけを作っているのかもしれません。(刀って、誰にでも売れるわけじゃないですものね)もう製造をやめてしまったということは無いと思います。刀を作るスキルの高い刃物屋さんが、貴重な技術を封印してしまったとは思えません。
 と、思って「菊一文字 日本刀」というキーワードで検索してみたところ、なんと「沖田総司の愛刀」というのがやたらにヒットします。そうか、沖田さんの刀は菊一文字だったのか。いい趣味してるじゃないか。すると、新撰組ファンとか、沖田総司ファンが菊一文字の店で、興味本位で包丁を買ってみる、みたいなこともあるのでしょうか。

 実を言うと、私はこの鋏に出会うまで、「菊一文字」というブランドは知りませんでした。
 私は、花鋏としては、国治とか、ゾーリンゲンなんかにあこがれていました。
 国治は、自分の先生が持っているのを羨望のまなざしで見ていました。国治の鋏は、1万ちょっとから買えるのですが(もちろん、上はもっと高いです)、それでも私にはなかなか出せる金額ではありませんでした。
 ゾーリンゲンは、道楽でお高い道具を買うのが好きな人に一度見せてもらい、値段を聞いて、国治のはるか上であることにびっくりし、「これは一生買えない」と思って畏怖の念さえ持っていました。(今思うと、あのゾーリンゲンは特注だったりしたのかも。ゾーリンゲンは花鋏を出しているんでしょうか?)
 もう少し身近な鋏では、木屋とか、うぶけやの鋏もいいなと思っていて、自分の手になじむやつをいつか買おうと思っていました。

花鋏:菊一文字

 「菊一文字」を知らなかった人間ですから、神田の菊一文字の店に入ったのは、まったくの偶然でした。
 私は、その頃、「素敵な古本ライフ」を送っていた人間でして、花よりも本の方に多くのお金をつっこんでいる日々でした。
 ある日、例によって神保町を一回りし、普段なら御茶ノ水から電車に乗るのですが、その日に限って、何を思ったかJR神田駅に向かって歩き出しました。その途中、信号待ちで立ち止まったときに、おそろしく美しい刃物の群れを見て、「カチーン」と固まってしまいました。
 それが、神田の菊一文字の店でした。小さな店ですが、明らかに「ただならぬものたち」が並んでおり、私はついふらふらと店に入ってしまいました。
 私は、専門的な刃物の知識がある人間ではありません。花鋏にしても、快適に使えればいいだけであって(今でもそう思っています)、刃そのものの美しさがどうのということは考えたこともありませんでした。
 それが、白昼の神田で、刃物の美しさにつかまってしまいました。私は、「妖刀に魅入られるお殿様」の話は、「有り得る!」と思いましたね。


 私は本当は、専門店に一見で入ることはキライなのです。その分野に詳しいならともかく、分からない分野のことを話しかけられても困りますもの。
 それでも私は、店に入ってしまいました(美は力ですねえ!)。花鋏を見たいと告げると、いくつかの鋏を出してくれました。「持ってみていいですか」と言ったら、「もちろん」とのことでした。
 そうやって持ってみたものの中で、私は「これだ」というのを密かに決めました。
 しかし、1万円以上の出費をそこで即決することが私にはできなくて、実際に鋏を買うことができたのは、それから一年以上もたってからでした。

 私は、創作のときには、メインの鋏は菊一文字ですが、花屋さん鋏=ハンドクリエーションも同時に持ちます。切るものによって、二つの鋏を使い分けるからです。私が、花展のときに二挺拳銃スタイルになるのは、そういう理由によるものです。

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