◆ひな祭りの花は、どんな花器に飾る?

 ひな祭りの花を「それっぽく」飾りやすい花器を紹介します。
 ……紹介しますが、そんなに「これでないといけない」「これでないとオカシイ」というものはありません。
 この記事を参考に、自分の身近にある器で、自由に生けてみてください。

◇その1 なんとなく、「ハレの日」風な花器

 「ハレの日用の花器」でなくていいです。なんとなくハレの日っぽい、で十分です。理由が無くても、飾る人がそう思ったらオールOK、くらいのゆるさでいいです。
 なんとなくハレの日っぽいと思ったら、それが100円であろうと、何かの空き容器であろうと、それでいいです。

 雛祭の花に、「決まった花器」はありません。「雰囲気」ですべてを決っしていきましょう。

◇その2 水盤とか、「いけばな花器」っぽい花器

 水盤や、普通の一輪挿しよりもすこし大型の花瓶や、足付きの花器は、枝ものを生けると急に「いけばな生けてます!」な感じになります。ひな祭りの花には、桃を生けることが多いので、「ちょっと本格派の気配がする器」と「家でめったに生けない枝もの」のあわせ技で、あたかも正式ないけばなを生けたようになります。

 家にそういう器があるなら、お節句の機会に活用しましょう。いつもは仕舞いこんである器を引っ張り出して生けると、家族も「おお、なんか本格的にやってるな」と感心してくれるでしょう。

◇その3 かわいい花器

 ひな祭りは、お節句の中でも一番かわいらしいテイストが強いものです。だったら、花飾りも、その「かわいらしさ」に乗っかりましょう。

 いかにもロマンチックな花柄の花器や、リボンのモチーフが付いた花器とか。色合いが華やかな花器とか。
 形が丸まっちい器も、可愛い印象を与えます。また、大きさがかわいい、というのもあって、普通よりも妙にちっちゃい花器は、ミニチュア風の可愛げがあったりします。
 あと、人が「可愛い」と思う器は、陶器よりもガラスの方が多いような印象がありますね。
 
 器単体で見ても、「え〜〜可愛い!!」と言われるような器に生けてみましょう。

◇その4 子供さんが喜びそうな花器

 お子さんのために、ひな祭りの飾り付けをするご家庭では、ヒロインのお気に召す器に花を生けてはどうでしょう。
 お子さんが特に大好きな器があったら、それを使ってみましょう。

 ヒロインが良いと言えば、ディズニーやサンリオなどの、キャラクターの付いた器でもいいでしょう。実際に、ディズニー仕様のお雛様も、キティちゃんおひな様も売っているのですから。
 そのほか、お姫様テイストの器、ラインストーンでキラキラの器なども喜んでくれるかもしれません。
 そうかと思うと、備前焼の花活けなど指定してくるお子さんもいるかもしれません。子供さんは、わりと通俗的で「いかにもそれっぽい大人仕様のもの」が大好きだったりするので、意外に激渋の器もストライクゾーン内なのです。

◇その5 ピンク色の花器

 桃の節句には、ピンク色がよく馴染みます。生ける花もピンク、器もピンクだと、温かく、かわいらしいお花が生けられそうです。
 ピンクの色合いは、濃くても薄くてもいいでしょう。また、ピンク単色でなく、柄つきだけど全体的にピンク味が強い、というような器でもいいです。

◇その6 白い花器

 ひな祭りの花の色は、桃のピンクと菜の花の黄色の組み合わせが王道です。そのどちらにも馴染み、引き立てる色として、白は比較的間違いが無い色です。
 白の花瓶、水盤、鉢などの器に生けると、「ピンク・黄色・白」で、明るい印象の花になり、早春らしい花が生けられると思います。

◇その7 桃の花っぽい柄がついている花器

 桃の節句なので、桃っぽい柄の器は、いかにもひな祭りっぽい器になります。
 「その1」で書いた「ハレの日」っぽいと同様に、なんとなく桃っぽいと思ったら、それでいいと思います。

 たとえば、茶色とピンクのぼかし模様なので、桃の枝っぽいな、とか。ピンクの小花が描いてあって、この花は桃にも見えるな、とか。または、「理由は分からんが桃っぽいな」でもいいです。
 要するに、根拠が無くても「なんか桃っぽい」でいいのです。家庭レベルの花の演出は、雰囲気とノリで大体大丈夫です。

◇その8 和柄の付いた花器

 今日びのひな祭りは、洋テイストが増えてきていて、和にこだわる必要も無いのですが、それでも、和柄が入ると、急にひな祭り色が強まることはたしかです。
 家に、和柄が付いた花器があるなら、それを使いましょう。

 着物の絵柄みたいなプリントの器とか、蒔絵みたいな金箔の花柄が付いてるとか、扇の模様、折鶴の模様などがついた花器とか、そういうものはありませんか? 自分で買っていなくても、京都・金沢などの、歴史のある土地・工芸の盛んな土地のおみやげ物でもらったりしていませんか?
 もしも、バッチリおひな様柄が付いた器を持っていたら、ぜひともひな祭りにお使いください。ほかの機会には使えませんからね!

 家に和柄の花器がなくても、千代紙を貼ったような箱(和菓子の空き箱などでもよし)があれば、中に空き瓶など入れて、即席の和柄花器を作ることもできます。子供さんと手作りで楽しむようなひな祭りにはお勧めです。

◇その9 漆器、もしくは漆器風な器

 ひな祭りに限らず、和のお節句には漆器が似合います。家に漆器の花器があるなら、それを使うと本格派のお節句の花を演出できます。

 本物の漆器が、もちろん一番ステキですが、プラスチックの「漆器風」でも十分です。なんとなく、それらしければいいのですから。
 私は実際に、プラスチックの「漆器風の枡」をよく使います→100均のプラスチック枡) 100均と書いてあるとおり、この枡はダイソーで買ったものです。たった100円の2合枡を、私はお正月、ひな祭り、お月見の花飾りに使っています。
 100均には、漆器風プラスチック食器が多数あります。特に、暮れに商品が充実します。そういうものの中に、花活けに活用できるものがないか探しておいてもいいと思います(100円だし)。

◇その10 労力的に楽なのは、小さい花器

 普段、花を生け慣れていない方は、少し大きめの花器を「手ごわい」と感じるものです。
 だったら開き直って、小さな花器に、楽してたのしく生けてもいいじゃありませんか。

 ミニサイズの花瓶や、鉢形の花器など、家の中に一つや二つは転がっていませんか? それに、1本か2本、短く切った花を入れるだけで済ませましょう。
 小さいと「ショボイ」「いかにも適当と思われるのでは」と気になる方には、そういうときにこそ正式感マックスの「桃と菜の花」を生けることをお勧めします。正統派の組み合わせの花を生けると、見る人の側が、「この小ささが上品でおしゃれ」とか、勝手に良いように取ってくれます。

 でも、個人的には、生け方に固いこと言うなと思います。飾る人が、楽しく飾りやすいのが一番!

◇こういう器は、ちょっと難しいかも……

 素人さんにはちょっと難しいかも、と思われるのは、ボリューム感の大きい器と、口が広くて胴が膨らんだ「壷型」の器です。

 ボリューム感が大きい器は、花よりも器の方がパワーで上回ってしまい、花が妙にしょぼく見えてしまいます。器のパワーに負けないように生けようとすると、大量の花を買うハメになったりします。花の技術がある人には、器の力にうまく乗っかる術もあるのですが、素人でそれをやるのは難しいです。

 「口が広くて胴が膨らんだ壷型の花器」というのは、たとえばこのような花器です。
一見、いかにもひな祭りの花に良さそうと思われるかもしれませんが、この手の花器は、素人さんが相手にするには手ごわいです。てゆーか、経験の浅いいけばな学習者でも手を焼きます。
 同じ大ぶりの花瓶でも、寸胴タイプのものだと、ただ放り込んだだけでも一応枝が立ってくれるのですが、画像の壷のような形だと、枝がだらしなくベローンと開いてしまうのです。
 要するに、こういうことになります。
↓ ↓ ↓

↑この大きな広がりを生かして花を挿していける人なら問題ないです。しかし、素人の方は、ほとんどこれを制御していけないと思います。
 この器に、放り込むだけで(枝を留める技術を使わないで)ある程度枝を立てていこうと思ったら、壷の口がいっぱいになるほどに枝を詰め込まないとムリでしょう。
 私にはムリ!と思う方は、丸い壷タイプではなく、寸胴タイプをお選びください。


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