◆松が剣山に立てられなかったら

お正月の松を生ける

※普段は花バサミを持つことも無いような、まったくの素人さん向けの記事です。そこそこ自力で生けられる方はご遠慮ください
※正月花を生けようと思っても、何から手を付けていいか分からない方は、どうぞご参考に

 当サイトでは、正月花の松について、「ど素人を自覚している人は、とりあえず松は立てておけ!」という作戦を推奨しています(簡単に正式っぽく見えるからです)。
 しかし、真の素人さんからすると、「松を立てる」ことが、物理的に難しいことも多いようです。なので、どお〜しても松が剣山に立てられなくて、立てることを諦めたい人向けの記事もご用意することにしました。

 松を剣山に立てないことは、「正月花としてヤバい」ことではありません。
 うちのサイトで立てることを推奨しているのは、それが「やりやすいだろう」と思うからであって、立てないとおかしいからではありません。管理人自身、自分が通っている稽古場で生ける正月花は、若松や根引き松だったら、短くしてしまうことの方が多いくらいです。安心して、「立てない松」を生けてください。

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◇ほっとくと倒れてくる正月花は、縁起物としてはNG

 なれない方が、松のような頭の重くて枝の硬いものを立てようとすると、剣山に挿したはずなのに倒れてきたりとか、剣山ごと倒れてくることがよくあります。

 それでも、一度生けた形を守ろうとして、傾いたら立たせ、傾いたら立たせをくり返して飾る人もいるのです。
 しかし、正月花の松は縁起物なので、すぐ傾くようなのでは良くありません。そんなときには、何らかの工夫をして倒れないようにします。

 倒れない工夫というのは、プロ的にはいくつかやりようがあるのですが、素人の方には、「短く切ってしまう」というのが、誰にでも出来る方法です。このページでは、主に松を短めにセットすることについて紹介したいと思います。

◇若松を、「ちょっと思いきって切りたい」場合には……

 いけばなやフラワーアレンジメントの経験がある人は、枝を切る行為にためらいを感じることはあまりありません。しかし素人さんは、切るのが怖くて手が出ない人の方が多いくらいだと思います。

 切って、失敗するのはイヤですものね。しかも、切り方の手本って、意外に身近に見つからないので、思い切って切れないもののようです。
 あと、素人さんで不思議に多いのが、「間違った切り方をしたくない」と思っている人の存在です。
 私は、草月流師範であり、本職の花屋でもありますが、「松の間違った切り方」というものは無いんですよね。松みたいなもん、どう切ってもいいんですよ。プロの場合、あまり妙な扱いをしているのを見られたら、人になにか言われるかもしれませんが(「sei先生も、あれじゃ恥ずかしいわねえ」みたいなね)、素人の方が、何を怖がることがあるのかと思います。

 えらいもので、松というものは、かなり小さく切り刻んでも、「正月花」の顔を保ち続けます。たとえば、私は小さなワイングラスに正月花を生けた年がありましたが、松の枝の、ほんの先っぽだけ使っても、ちゃんと「正月花」の領域に踏みとどまってくれました。

 しかし、最初から小さく切り刻んでいくこともないと思いますので、素人の方でも、一番鋏を入れ易い若松のカットの方法を一例だけ紹介してみます。

↓こんな単純な切りかたでOK!
お正月の松を生ける

 若松の、真ん中の一番長い枝を、枝分かれ部分で切り落とし、2本に分けました。こう切ると、「立てられない……」と困ることはかなり少なくなると思います。それは、切り分ける前と後では、一本ずつの重量が全然違うからです。
 切る前は、上の画像の下の枝(枝分かれしているほうの枝)の上に、一本長い枝が付いていたわけで、それだけ頭が重ければ、一本の足ですべて支えて立たせるのが困難なのは道理です。

 しかし、「こう切ると、若松らしい真ん中が高くて左右に枝が出ている形が崩れるじゃないか」と思う方もいるかもしれませんが、別に若松らしい形を保つことが正月花の使命ではないのですから、軽い気持ちで短くしちゃってください。
 もしも、「短くしても、何が何でも真ん中が高い若松の形にこだわりたい」のであれば、私だったら切った枝でその形を再現します。真ん中を一本長くして、その脇に1本か2本の枝を出せば、「ミニ版若松」ができますよね。そのくらいの気持ちで扱っても大OKなのです。

◇カットした松を、実際に生けてみる

 短くした松は、大きく線を出す生け方とは違う使い方ができるようになります。初心者さんにもやりやすいのは、、こんもりと平均的に器を埋めるような使い方です。

 一例として、画像を貼ってみます。(松だけでなく、ほかの花材も入れています)
 下のような入れ方は、私がわりと常套手段にしている方法です。いけばなよりも、フラワーアレンジ的な考え方になるのですが、これはいわば「正月花の素」みたいなもので、正月花材でざっと器を埋めて、これになにか足して正月花を完成させるためのベースにするのです。

↓これだけでは「未完成品」です。
お正月の松を生ける
 何も考えずに、まったく機械的に挿し、ただ器を埋めただけです。松は、大体同じ長さに切り、剣山には、そんなに真剣に刺していません。このくらいほかの花材も入って「こんもり」だと、あんまりしっかり刺さなくても倒れる余地がありません。
 というような、いい加減挿しですが、これに梅とかロウバイを二本くらい立たせたら、素人正月花としては十分なものができます。その場合には、一番高くなる枝が梅やロウバイになります。(松を最も長くせよという決まりはありません!)
 上の画像は、すいぶん長い枝を足すことも想定して「ことさらにこんもり」させているので、家庭サイズなら、もっと小さい「こんもり」で大丈夫です。(上には、「これは未完成品」と書きましたが、もっと繊細に作りこめば、このような「こんもりタイプ」の正月花も良いものです……てゆーか、上の画像くらいで飾っちゃってる素人さん、現実にいると思います)

 上の画像に、ぐいっと横に伸びた蛇の目松なんか足しちゃうと、このようになります。
お正月の松を生ける

 要するに、器をこんもり埋めるところまでの作業は、お化粧で言うと、ベースメイクまでやりました、というところです。

 このような土台を作っておくと、あとは好きな方向にデコレーションしていくだけなので、非常に気楽です。
 上の例では別の種類の松を横に伸びるように足しましたが、縦方向に枝を足したってよいのです。また、あけび蔓やキウイ蔓など持っている人は、蔓で上に大きく線を描いたりしても面白いです。

 足してから全体を見て、ベースの部分に不満があれば、ちょいちょいと手直しします。しかし、ものすご〜〜く無難に作ったベースなら、よほどこだわりたいのでなければ、手直しもあんまり要らないことが多いです。(いけばなとして高めた作品を生けたい場合には、こんな「ベース」を作ってちゃダメですよ)

 若松は安いので、このように短くしてもそれほど勿体無くありませんので、カットにチャレンジしたい方は、まずは若松からカットしてみましょう。(でも、自分の感覚で切れる人なら、根引きも五葉も切っちゃって良いと思います。だいじょーぶだいじょーぶ、そんなにカッコ悪くならないって)

◇カットした松に、短いながらも「長短」をつけてみる

 上の項の例では、一番簡単にできるように、「松は、大体全部同じ長さ」に切っています。しかし、もうちょっと「本格的に生けたっぽい」ように見えるには、松にそれなりに長短を付けられるといいのです。

 たとえば、少し深さのある鉢型の花器に剣山を入れ、短く切った松を入れてみますが……
お正月の松を生ける
 これも、すご〜く甘く剣山に刺してあります。しかし、縁の高い鉢なので、ちょっとくらい動いたところで、「倒れた」という印象にはなりません。つまり、「倒れようが無い」状態です。
 倒れないように刺すことを目指すよりも、倒れようがない状況を作るほうが、素人さんにはやり易いと思います。

 で、さすがにこの松だけではしょうがないので、アンスリウムと、猫柳を足してみました。
お正月の松を生ける
 器の口を埋めるためだけに、松を使ったっていいのです。上の画像で高く使っている猫柳などは、軽いし茎が松ほど硬くないので、素人さんでも簡単に高さを出して立たせられます。低いところに入れた松が、がっちり剣山を落ち着かせているので、猫柳三本くらいのために、剣山がひっくり返ることもありません。

【参考】松を扱って手に松脂が付いたら、こちらを参照ください→松やに落とし松やに対策


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