◆草月流の鉄花器を買う方法

 草月を習っている方なら、「草月流アトリエ製 鉄花器」の存在を知っている人は多いと思います。「新作花器が出るたびに、バンバン買ってるわよ」「自分でデザインしたものを、ガンガン発注しているわよ」という方もいるでしょう。
 しかし、そういう玄人の方は、このコラムは飛ばしてください。このページは、「草月の鉄花器を、草月会館で買えるらしいが、どうすればいいのですか?」という初心者の方に見ていただき、活用していただきたいと思います。

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◇そもそも、草月流アトリエとは何か?

 「草月流アトリエ」とは、もともとは、草月流家元の「職人的製作助手」の集団でした。今でも、基本的にはそうなのですが、だんだん「草月流アトリエ」自身が作品創作をするようになったり、製作ノウハウのセミナーを開催するようになったり、「家元だけのための集団」ではなくなっています。昔よりも、もっと多様な業務をする組織となっているわけです。
 その、多様になった業務のひとつに、鉄花器、鉄オブジェ等の製作・販売があります。
 つまり、アトリエ作の既製品を買うこともできるし、こちらから「こういうの作ってください」とオーダーすることもできます。
 鉄花器に興味がある方、本格的に展覧会活動をしたい方には、なかなか「使える鉄屋」になると思います。

◇草月流アトリエで買うことができるものは?

 およそ、以下のようになります。

【1】鉄花器
【2】鉄花留
【3】鉄オブジェ(支柱や足なども含む)

 個々について、下記で解説しましょう。

◇どんな鉄花器があるのか?

 とりあえず、草月流公式サイト内にある、金属花器の案内ページをご覧ください。
 ‥‥見ました? 多分10に満たない商品画像数だったと思います。(ページの内容は時々変わります)しかし、実際に扱っている商品数はもっと多く、おそらく40種類くらいの商品があるのではないかと思います。
 私が「何種類です」と断言しない理由はですね、生産終了したり、新作を出したり、割と頻繁に商品数が変わるからなんです。最新の「商品ラインナップ」を知りたい場合は、草月流本部に行く機会のある方なら、草月会館3階の、アトリエ花器のサンプル展示コーナーに行き、実物を見たり、「草月流アトリエ オリジナル鉄花器カタログ」(無料)をもらったりするといいのですが、実はこのサンプルも、カタログも、古いまま更新されていないことがあるので、いざ注文してみると「売り切れました」と言われる可能性があることを、あらかじめ了解しておいてください。
(特注花器の注文については、下記に別項を設けています)

◇どんな鉄花留があるのか?

 花留とは、花の引っ掛け所となるように作った鉄の線の塊みたいなものです。私の持っている花留の画像を、こちらでご覧ください→鉄花留(直線) 鉄花留(曲線)
 私は直線曲線しか持っていませんが、三角というのもあります。(鉄花留についての解説は、鉄花留(直線)のページを参照ください)

◇どんなオブジェがあるのか?

 草月流アトリエには、花を生ける機能の無い純粋な「オブジェ」の既製品はありません(2011年現在)。そのため、オブジェを作るなら、オリジナルのデッサンを提出し、値段交渉して発注することになります。

◇花器や、オブジェなどを特注する方法

 草月流アトリエには、花器・オブジェ・作品の支えになるような足など、いけばな作品の制作上、必要になる鉄製品を発注することができますが、まずは発注の、大体の流れについて書いてみます。

【1】アトリエに電話(または訪問)して、「こういうものを作りたい」と伝える
【2】デッサンをアトリエに提出(不要な場合もあります)
【3】製作可能かどうかの返答をもらい、値段、納品の日時と方法を決める
【4】納品後、支払い

↑このようになります。下記に、電話(または訪問)するところから解説しましょう。

◇電話も訪問も、堂々とせよ!

 初発注のときには、電話するのも緊張するという人がいます。しかし、「お家元の助手様がただ」などとかしこまる必要はありません。こっちは、お金を払う客なのです。堂々と取引しようではありませんか。
 私が見たところ、アトリエの皆さんは、職人肌の人が多いです。「本部の先生方」というより、「熟練の職人」をイメージして話した方がいいかもしれません。どっちにしろ、注文の電話をするのですから、向こうは喜んで相談に乗ってくれます。最初の電話の段階で込み入った相談があるような場合も、遠慮なくバンバン聞いてみましょう。
 私は、頼むときにはまず電話しますが、度々本部に行く用事がある方は、直接アトリエを訪ねて行ってもOKです。やりやすい方法でコンタクトを取ればいいと思います。

◇何を注文したいのかを伝えよう

 アトリエに、鉄製作を注文する際には、「何のために、何を作って欲しいのか」をちゃんと説明できるレベルまで考えてから発注しましょう。しかし、ミリ単位まで細かくはじき出した「完成図」などは、無くても大丈夫です。私などは、むしろファジーな部分を残した状態で注文に行きます。
 なにゆえファジーで行くかというと、自分に鉄の知識がほとんど無いので、自分が考えたものよりも合理的な方法があるかもしれないし、コストを下げる方法もあるかもしれないからです。そういうことを相談できてこそ、「流派のみんなのための鉄工所」です。
 たとえば、私はこの鉄ポールをアトリエで作りましたが、高さ・パイプの太さ・足の形・足の厚さなどを、何一つ断定しないで注文に出向きました。作ったポールでやりたいことだけが固まっていて、ポール自体の細部はアトリエで立ち話ししながら決めたのです。
↓こんなアドバイスをもらいながら決めたと記憶します。

「この長さの鉄パイプはどうだろう。これなら在庫があるから、早くできる」
「パイプが太すぎるのがイヤなら、この太さがおすすめ」
「足は、この円盤でどう? これなら分厚すぎない」

↑このように、結構親切に相談に乗ってくれます。もちろん、「相談の必要なし。何も聞かずにこちらの望みの寸法で作ってくれればいいのだ」というドライな注文も大OKですが(アトリエとしては、そっちの方が手間が無くてうれしいかも)、鉄初心者のうちは、「何をどうしたいためにこれを注文します」と言ってみた方が自分のためだと思いますね。なぜなら、素人計算で、「これで十分だ」と思ったものが、いけこみの日に「完全に不十分だった!」と発覚することもありうるからです。
「この上に、これを乗せる予定なんです」
「こういう場所に置きたいから、こういう足を付けてほしいんです」

……みたいな情報を伝えておいて、損は一つもないと思います。草月流アトリエは、いけばなを自立させるための支えとか足場にするための鉄に関しては、とにかく経験値が豊富ですので(日本一かも?)、価値あるアドバイスをしてくれると思いますよ。

 私は、上記のように、ファジー注文を得意としていますが、何もかもファジーのままに注文に出向いてはいけません。作品の核心に関わる部分を「どうしましょう……」と相談するための場所ではありませんからね。何を表現したいのかを、アトリエに決めさせるのはお門違いです。あくまでも、「手段はいくらかファジーだが、目的は揺るがない」状態で、注文に行ってください。

◇アトリエ内には、参考になるものがたくさんある

 草月流アトリエに、一度でも行ったことがある方は分かると思いますが、未加工の鉄素材とか、鉄枠とか、作りかけの鉄花器が、その辺にいくらでもあります。
 たとえばの話、「丸い花器を作ろう」と思っていたのに、アトリエでたまたま三角のオブジェの面白いものを見かけてしまい、「三角がいいかも!」と路線変更する人もいるのではないかと思います。慣れてきたら、それくらいの柔軟性もアリだと思ってアトリエに行ってみると面白いです。

◇デッサンは、出さないとダメ?

 アトリエに注文を出すときには、基本的にはデッサンを持っていった方がいいです。言語だけで、完全に伝わるような、
「カタログに載っている○○を、倍の深さで作ってください」
みたいなものなら、まあ無くてもOKですが、それでも、一応デッサンは提出した方が、話が早いことが多いです。
 デッサンは、絵として上手である必要はありませんので、人が見て分かる範囲で描けば良いと思います。

◇アトリエから「NG」が出たら

 アトリエから、「製作NG」が出ることはあり得ることです。しかし、それは作者(発注者)の創造性のレベルにNGを突きつけてくるということではありません。以下のような理由が考えられます。
●発注内容が、物理的にありえない構造になっている
●発注品が、アトリエにの能力では(人のスキル・機材の不足などで)作れない
●注文が細かすぎて応じきれない
●納品日が近すぎて約束できない
●作ろうと思えば作れるが、危険性が高くて作れない
↑このように、いわばかなり実際的にできないことを断ってくることが考えられます。しかし、どのような場合でも、必ず、「それはできないが、こういう方法はどうだろう」「アトリエから、さらによそへ発注すればできるが、どうだろう(割高になるけど)」など、代替案の提示はしてくれようとします。なので、「できません」の一言でガーンとしてしまわずに、冷静に相手と話して打開策を探すのが賢いと思います。

◇アトリエの言いなりになる必要は無い

 アトリエは「いけばなにおける鉄製作」においてはプロですので、アトリエの提案には、耳を傾ける価値のあることが多いです。しかし、何を言われようが、折れてはいけないことが作者(発注者)の中にある場合は、いかにアトリエが「こうした方が賢いですよ」と言ったとしても「はい」と言わねばならない義務はありません。譲れない何かよりも、アトリエの意向を優先させてはいけません。(倒壊の危険性を指摘されたような場合は別ですよ)
 また、アトリエのスタッフは、自分自身も花展に出しているような人がほとんどなので、相談の途中で、勢いで「こういうの、いっぱい立てても面白いですよね!」「曲線でもカッコイイですよね!」みたいな発言をすることがあります。これは、作者同士のノリで話しているようなものですので、
「2本だけ立てようと思ったんだけど……もっといっぱい立てなきゃダメかしら」
「曲線に考え直した方がいいんだろうか……」
などと、引きずられる必要はありません。有益なアドバイスは、賢く我が物にするのは結構ですが、相手が「ほんの一例」として挙げた可能性に、こちらが合わせようと悩むのはおかしなことです。

◇納品の日時・方法

 納品の日時や、方法に、どうしても指定したいことがあれば、アトリエに相談しましょう。
たとえば、
「遅くも今月中には絶対に納品」
「○日までに納品」
「○日に、車で取りに来ますので、それより早くできたら保管しておいて欲しい」
「宅配便で送って欲しい」
「草月展会場に届けて欲しい」(←このパターン、不可になる可能性アリ。注文の際に確認してください)
などです。
 品物の渡し方は、基本的には「発注者が取りに来る」か「送る(送料がかかる)」ですが、納品先が赤坂・青山近辺だと、アトリエが暇なときに届けてくれるようなこともあるようです。できるだけ、発注者の負担が小さい方法で渡してくれようとしますが、アトリエも人手が足りないことが多いので、できないことははっきり「できない」と言われます。(「去年はやってくれた」とかゴネないであげてください)
 また、アトリエは、基本的に「注文順」で仕事をこなしているはずですので、秋の流展前などの注文が多い時期には、普段5日であがってくるような発注に、10日かかるようなことも起こります。その辺は、あらかじめ予測して発注した方が良いと思います。

※アトリエに発注する物体は、梱包しやすいとは言えない形をしていることが多々あります。それを、実にうまいこと梱包してくるので、アトリエから送られてくる荷物からは、梱包のノウハウをゲットできます。

◇支払い方法

 アトリエに直接払いに行くか、振込みになります。
 たまに、「お菓子でも持って行かなきゃいけないのだろうか…」という人がいますが、こちらもお金を払っているビジネスなのですから、私は「そういう面倒なことはナシ!」で良いと思います(私は実際にそうしています)。しかし、とてつもない我侭を通して、普通なら到底してくれないような骨折りをアトリエにさせたのであれば、ちょっと何か持っていくのが良い場合もあるかと思います。あくまでも、そういう「ごめんねギフト」「お世話様ギフト」程度のものであって、「アトリエ様に貢物」は、今日び不必要だと思います。


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