◆草月流展 出品完全マニュアル:その5 〜花材の発注〜

 ※出品初心者さんのためのガイドです
 ※前頁草月流展 出品完全マニュアル〈その1〉〈その2〉〈その3〉〈その4〉〈その6〉〈その7〉〈その8〉〈その9〉と併せてお読みください。

◆花屋さんに注文する方法……どこに注文する?

 展覧会用花材の発注方法は、花束やアレンジメントの注文とは、少し違う部分があります。

 まず、どの花屋さんに発注するのかを決めます。
 できれば、いけばな展覧会のための納品経験が豊富な花屋さんが望ましいです。経験豊富な上に、自分の作風なども理解してくれている懇意な花屋さんがあるのなら、そこに頼むのが良いです。

 これから、どこにするか決めようという場合には、いかにも展覧会に納品慣れしていそうな花屋さんにあたりをつけます。
 自宅の近所などで探すなら、いけばな教室の看板を出している花屋さんとか、枝ものを常に置いている花屋さんなどが狙い目ですので、普段から物色しておくと良いです。(できれば、親しくなっておくともっと良い)
 もしくは、稽古場の先生、先輩、友人などで、すでに展覧会に出品経験のある方に相談するのも◎です。(紹介なんてしてもらえると、もっと良い)

 あるいは、少し値段は高いですが、草月流展に、公に出入りする花屋さん(例年、花判と花茂が入ります)に注文すると、一番楽です。
 なぜなら、町の花屋さんに頼むと、店頭で注文した花材をもらって、後は自分でいけこみ会場まで持って行かなければなりませんが、会場に出入り公認店であれば、注文花材は一括で会場まで持っていってくれるからです。(私も、たまに使っています)

◆花屋さんに注文する方法……花屋さんのアドバイスは貴重な情報である

 実は、いけばなの作者は、注文花材を確定してから花屋さんに向かうとは限りません。
 懇意の花屋さんにフラッと行って、「11月に、良い枝ないかしら」「今年の紅葉良さそう?」「実物は、もう市場に出てきてる?」とか、花屋さんと話しながら花材を固めていく人は多いのです。(なので、こういう話ができる花屋さんを確保しておくと良いんです)
 花屋さんが、「今年は、実物の色がよくないね。値段も妙に高いなあ」「先週あたりから、チューリップの良いのが出始めている」などと教えてくれる情報を、どんどん脳内にストックしましょう。
 花屋さんも商売ですので、注文のための相談には、きちんと相手になってくれます。
 しかし、花屋さんの種類と、スキルによっては、相談にならない場合もあります。そんなときには、相談を切り上げ、別の、もっと目的にかなった花屋さんを探しましょう。ダメなら切り上げる、という奥の手を使うためには、最初から「注文お願いします!」と断定で入っていかないで、「こんな注文は、できますか?」という疑問で切り出しましょう。

◆花屋さんに注文する方法……「これが欲しい」と上手く伝える

 これが、意外に難しかったりします。
 例えば、「ひまわりを30本」と注文したとすると、ひまわりならなんでもいいのか、何か外して欲しくないポイントがあるのか、まったく分かりません。
 「できれば、顔が大きくて、軸も太めな、濃い黄色のものがいい。長さは、少なくとも70cm以上。色や大きさは〈できればベース〉でいいですが、長さだけは死守してください。もちろん、値段は安く済んだ方が嬉しい」くらいは伝えた方が良いです。(本当に、ひまわりなら何でもいい場合は、「ひまわり!」だけでOKですが)

 花屋さんは、「展覧会」と聞くと、仕入れに気合が入るものなんです。そのため、普段はお店で見ないような、超立派な花材が届き、かえって経験の少ない出品者の手に負えなくなってしまった、みたいな話も本当に起こります。
 一番大切な要の部分をうまく伝えることができた人が、良い結果を得ることができます。

◆花は、多めに頼むのが安全

 いけこみや、会期中は、何が起こるかわかりません。
 花は、保険だと思って、多めに発注しましょう。

◆花屋さんに注文する方法……「入荷不可!」と言われたら

 「入荷不可」と言われるタイミングは、二つ考えられます。それは、

@注文したその日に、「うちはそういうのは入荷しません」と断られる
A展覧会の前あたりになって、「例年、難なく入荷できるのだが、なぜか今年は市場に出てこない! どうしましょう」と言われる


↑のようなケースです。
 @の場合は、「じゃあ、他をあたります」で、よその花屋さんを探しましょう。しかし、何軒回っても、すべて「不可です」と言われる場合は、自分が何か方法を間違っていないかを疑いましょう。(例:選ぶ店を間違っていないか? 常識的に有り得ない注文をしていないか?)
 本当に困るのは、Aのケースです。この場合は、花屋さんも結構青くなっています。
 こんなことが起こるのは、結局、植物が、生き物だからです。計画生産可能とは言え、工業製品のようにはいきません。
 もしも、「入らない」と言われたら、代用花材を探すとか、作品形態を思い切って変えて乗り切るとか、金を積めば何とかなるなら積んでみるとか(お金持ちさんの場合)、打開策を探しましょう。きっと、良い方法はあります。諦めないでください。ショックでガーンとしている暇はありませんよ!
 花屋さんに「注文を受けたんだから、あなたが何とかして」とすべてを押し付けるのも、責任ある出品者としては誉められた態度ではないと私は思います。植物を扱う者なら、このような事態は想定の範囲内であるべきです。

◆いけこみ当日、納品された花材を見たら、イメージが違った! どうすればいい?

 これも、結構よく起こることです。
 ほんの僅かな色味の違いで、リハーサルのときに出た色が出ないとか、
 枝つきが妙にゴツイ枝しかこなかったとか、
 花が大きすぎ、はめようと思っていたところにはまらないとか、
 軸がたわむ花だと思っていたのに、妙に固くて曲がらないとか、
 枝が立派すぎて重く、用意した支えでは不安だとか、

 「風情」から「物理的なこと」まで、色々と作者の思惑を裏切るものが入荷する可能性は大いにあるのです。
 しかし、これを乗り切る方法は、↑の「入荷不可」の項と同じで、柔軟な思考と、素早い行動があるのみです。
 結局、目の前にある花材で生ける以外に、方法はないのですから、今あるもので、最良の作品を作ることを考えましょう。
 できないことは、絶対にありませんよ! 私は、「できない」と泣いて帰った出品者を見たことなんかありませんもの。いつも、お稽古場で、リハーサルの無い作品をいけていることを思い出してください。
 そういうときに、夢中でいけた花が、意外に「いつもより良い」なんて言われるものです!

◆花屋さんへの支払いは「後払い」が多い

 すべての花屋さんがそうではありませんが、特注花材の支払いは、後払いのことが多いです。花を受け取って、展覧会が始まっても、いくらの花だか分からないというのは、割と普通のことです。
 しかも、注文品というのは、「無理してでも仕入れる」と約束しているわけですから、店頭に並ぶお花よりも、高くつく可能性を大きく持っています。(ちょうど良い具合に、安値で市場に出てくれれば良いんですけどねー)
 「そんな、後になって超高額を言われたらどうしよう」と、心配ですよね。
 大抵の人には、資金に上限があるのですから、注文を出すときに、「およそどれくらいになりそうか」を、花屋さんに聞いてみましょう。あくまでも、「およそで」です。
 このときに、あまりにも詳しく聞いたり、相手に金額を断定させようとすると、「この先生、素人だ」と思われ、舐められます。
 「およそベース」でありながら、なんとなく値段帯を察していける会話に、うまく持っていくのがコツです。花屋さんと、ぶっちゃけトークできる信頼関係を築いてあると、とっても話が早いです。
 もしも、話している途中で、自分の予想値段が、現実と激しく異なると分かったら、その場で注文するのはやめ、値段を自分でもリサーチしてみるなど、見直しが必要です。
 思っていたより安く済む分には良いんですが、5,000円程度だろうと思っていたら5万円だったなんて、本当に泣くに泣けません。(返品できませんしね)

 上にも書きましたが、花は生き物です。タイミングによって、市場の出荷状況が、熟練の花屋さんにも読めないことは間々あります。そのため、展覧会の前になって、市場に「予想を大きく上回る値段が付くかもしれない」という気配が現れることもあります。
 そんなとき、良心的な花屋さんならば、「今年はシャレにならないくらい高い。どうします?」くらいの連絡はくれます。そのときは、高くてもそのまま注文を打ってもらうのか、別の花材に乗り換えるか、作者が判断してください。

》》草月流展 出品完全マニュアル〈その6〉に続く!
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