◆自分が所属しているフラワースクール、フラワー協会、流派、教室などが消滅したら、私の持っている「資格」はどうなるのだ!

 このサイトのゲスト様から、何回かこの質問をメールでいただいています。
「所属スクール(教室)が無くなったら、私の持っている免状は紙切れなのでしょうか?」
 この質問への答えは、Yesでもあり、Noでもあります。

 YesでもありNoでもあるって何?って思うかもしれませんが、発行元が消滅した免状類は、ある意味においては紙切れになるし、ある意味においては無駄にはなったりしません。
 そもそも、母体スクールが無くなるのと、教室が無くなるのでは、かなり話が異なりますので、その辺から解説しましょう。

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◇免状の発行元が無くなるのと、免状を申請した教室が無くなるのは全然別のこと

 まず、「免状の発行元=母体スクールが無くなる」ことと、「自分が通っていた教室が無くなる」ことの違いについて、管理人自身がリアルにいけばな草月流の教室を主催していますので、草月流を例にして説明してみます。

 この例の場合、「母体スクール」は草月流本部で、「教室」は、管理人seiの個人教室です。
 sei教室が消滅しても、seiがお弟子さんのために申請した免状は、効力をなくしたりはしません。これは、当然のことです。
 そうしないと、教室消滅後、お弟子さんが別の教室に移ったときに、また一番下の免状から取り直せ、ってことになります。そんな馬鹿なことがあるわけがありません。

 常識的に考えて、草月流だけでなく、ほかのいけばな流派も、フラワーアレンジやプリザーブドフラワーの○○スクールも、○○協会も、みんなこの考え方を採用しているはずです。
 自分の通っている教室が急になくなったりしたら、色々残念なこと、困ることはあると思いますが、「私の免状は無効なの??」という心配は無用です。

◇ついでに、「レッスンプロ登録」についても、ちょっと解説

 免状申請の話のついでに、フラワーの世界の「レッスンプロ登録」について、一般的なことを書いておきます。

 いけばなでも、フラワーアレンジでも、プリザでも、資格を取って上に上がっていくと、「ここから、指導可です」というラインがやってきます。
 そして、無事「指導可」となる資格を取ったときに、ほとんどの場合は、母体スクールから「レッスンプロ登録」のお誘いを受けます。

 「レッスンプロ登録」というのは、「母体スクールに、免状申請するための登録」です。名称は、各スクールにより異なり、「講師登録」とか、「プロフェッシナル認定」とか、「○○フラワー協会会員登録」とか、「師範会入会」とか、色々あります。(当サイトの、資格紹介の各ページをよく読んでいただくと、そのような情報も見ていただけます)
 そういう、「レッスンプロ登録」をして、自分の生徒さんたちへの免状申請が可能になるというのが、一般的な母体スクールと末端の教室の先生の関係です。これはつまり、「免状」という有料のものを仲介するにあたって、正式に母体スクールと約束事を取り交わし、組織にしっかり所属していただき、母体スクールの側に情報把握されている先生でいていただきますよ、ということです。

 このようなレッスンプロ登録は、自分の生徒さんに免状申請することは無いだろう、と思うなら必要ありません。どんどん上の資格が欲しくて「指導可」のところまで進んできたけど、実際にはこれから先も教えない、と思う人なら要らないのです。(スクールによっては、指導可資格の取得は、レッスンプロ登録が大前提の場合もあります。そういうところでは、「取ったけどレッスンプロ登録しないもん」というのはダメですよ。そう思うなら、取らなければいいのです)
 母体スクールは、「指導資格を取ったなら、当然レッスンプロになりたいのだろう」と思って「お誘い」してくるのです。そのお誘いにメリットがあれば乗りましょう。

 少し、具体的に説明します。上の項でも例にした、「草月流」と「個人教室主催のsei先生」の関係で説明しますね。
 seiは、草月流の師範資格を取りました。そして、指導したいと思っていたので、師範資格を取ると同時に、草月流の「指導者連盟」というものに入りました。これが、草月流の「レッスンプロ登録」です。
 seiは、指導者連盟の会員なので、自分のお弟子さんに「免状欲しい」と言われたら、草月流本部に免状申請できます。もしも、指導者連盟の会員にならないままに教室を続けたとしても、別にどこからもお咎めは受けませんが、お弟子さんの「免状欲しい」には応じられません。免状取得を目的として通ってきていたお弟子さんなら、教室をやめてしまうでしょうね。
 教室をやめられてしまうのは、seiにとって良いことではありません。なので、sei先生は指導者連盟の会員でいることに意味があります。

 つまり、「指導可資格」を持っていても、レッスンプロ登録をしないと、普通は自分の生徒に免状を取ってあげられないのです(そうでないシステムのスクールを、私は知りません。あるとすれば、超例外です)。なので、「指導可」だけど、「免状申請不可」の有資格者というのは、有り得るのです。

 「個人教室のsei先生」の例を見ていただくと分かるかと思いますが、「レッスンプロ登録」というのは、資格を持っている個人と、母体スクールの、直の関係なのです。なので、seiが親先生の元を離れ、地球の裏側に放浪して行ってしまっても、指導者連盟の会員でいるうちは、免状申請可です。レッスンプロ登録は、ほとんど「年会費制」か、「数年おきに更新料をはらう」という方法で有効になります(各スクールにより異なります)。規定の料金を払っている限り、普通はいつまでも「免状申請可の先生」でいられます(更新のテストがあるスクールは存在するかもしれません)。

◇もしも母体スクールが無くなったら、「免状」は紙切れ?

 「スクール消滅」の話に戻りましょう。母体スクールからして無くなってしまったら、免状取得者はどうなるのか。
 たとえば、seiフラワーアカデミーというスクールがあって、全国に多数の教室があり、個人教授も山のようにいた、としましょう。ところが、seiフラワーアカデミーは経営破たんでつぶれちゃったとしましょうか。

 そうすると、全国各地の教室の先生方は困ってしまいます。もう、「seiフラワーアカデミー」の看板を上げて営業することはできないのですから。
 個人教室を運営している、一人ひとりの先生方は、ちゃんと花の技術を持っていますから、技術を誰かに教えることは自体は可能です。しかし、「資格が欲しい」と思って入ってくる生徒さんは受け入れられません。免状の発行元は、もはや無いのです。そもそも「つぶれちゃったスクールの教室」に、新たに入ってくる人がいるとは思えません。

 このように、「資格を出せなくなった」「資格取得にかかわる業務で料金を取れなくなった」という意味では、seiフラワーアカデミーの免状は、母体の倒産によって紙切れになったと言えます。
 しかし、花の技術を取得した証明書という意味では、突如意味をなくしたりはしないとも言えるのです。

◇母体スクールが無くなったときに、直接的には何が「困る」のか

 免状に限定せず、大規模なフラワースクールが消滅したときに、スクールの生徒さんたちが、現実的にどんなことで困るのかを考えてみましょう。

 まず、自分の習っているスクールがなくなれば、シンプルにがっかりするはずです。教室が閉まって、別のスクールを探す人もでるでしょう。新しいスクールに入りなおし、そこでも免状が欲しければ、また一から勉強することにもなりかねません(他スクールの有資格者を途中編入させてくれるスクールもあります。これについては後述します)。
 めんどくさいケースとしては、免状申請途中(料金払い込み済み)に母体スクールが倒産、というのが最悪です。返金手続きなど確認しなければなりませんし、最悪、法的手続きの可能性など考えなければならないかもしれません。

 各個人教室で教えている先生たちは、新たな集客が困難になり、契約しているカルチャーセンターや学校指導・会社稽古など、すべて失う可能性が高いです。また、今までに受けた、指導者向け講座の受講料や、花展の出品料など、先行投資と思って出したお金が無駄になります。そして、単純に、「母体スクールが消えうせた」というのは、情けないですし、外聞も悪いです。信じていたものを裏切られた気持ちにもなるでしょう。

 しかし、一方で、指導資格の免状を持っているのに、母体スクールの消滅が、痛くも痒くも無い人もいるはずです。

◇自分の免状の母体スクールがなくなっても、痛くも痒くも無い人もいる

 指導可の免状持ちなのに、母体スクールの消滅なんて全然へーき!という人も、結構いるものです。

 たとえば、
  • 指導資格は取ったけど、もはや教室にも通っておらず、自分で教えることも無い
  • 指導資格を武器にして取ったデコレーションの仕事があるけど、とっくに自分の信用を確立したので、母体スクール消滅で仕事を失うようなことは無い
  • 嫁入り道具として、教えられる免状の一つくらい無いと恥ずかしいと思って取ったが、すでに結婚したので目的は果たした
  • ずるずる続けてきた教室をやめる機会が欲しいと思っている
  • 花を触るのが好きなだけで、スクールのブランドに思い入れは無い
このような人たちなら、母体スクールの消滅は、そんなに痛手ではないはずです。さすがに、免状取得にかかった金額を思い返したら、「がっかりだなあ」とは思うでしょうが、切羽詰って「困る!」ということは無いと思います。そういう人にとっては、スクールの消滅によって免状が瞬時に紙切れ化するということは起こりません。

 世の中の、花の資格を取る皆さんは、全員が「教えたい。生徒のために免状申請できる先生になりたい」と思っているわけではありません。むしろ、教える資格を持っている方の中で、実際に教える人のほうが少ないくらいなのです。
 では、なぜ多くの人が、指導資格を取るのかと言えば、「上達・努力の証」が欲しいという思いが、多分一番多いのではないでしょうか(私はこのタイプではなかったので、この気持ちが実はあまり分からないのですが……)。紙になって存在する免状があれば、「ちゃんと花の技術を習得した人だ」ということが、客観的に明らかになります。

 でも、「ちゃんと花の技術を習得した人だ」という事実は、母体スクールが無くなろうが、否定はされませんよね。形ある「紙」と、無形の「腕」に、立派な技術習得の証が残っていれば、努力した時間と注がれた情熱を、誰が否定できるでしょうか。
 そう思えば、母体スクールがどんなことになろうが、免状は紙切れではありません。少なくとも、他人が「その免状、無駄になったね。紙切れ同然だね」とは言えないはずです。
 「楽しみ」の部分も、同様です。母体スクールが無くなったら、花を飾るのが楽しくなくなるなんて、有り得ないことです。技術も楽しみも、誰にも奪われはしません。

◇本当に優秀な資格は、たとえ発行母体が無くなっても一目置かれる(と思う)

 上の項に書いたように、技術と「花の楽しみ」そのものは、一度手にしたら奪われたりしないものです。そして、真に優れた技術の証明になる免状であれば、母体スクールが無くなっても、人から一目置かれることに変わりないと思います。
 断定せずに、「と思う」と書くのは、かつてそうなった資格を見たことが無いからです。有力な資格というものは、めったに母体スクールがなくなったりしないので、実例を目の当たりにしたことがありません。

 「持っている技術に一目置かれる」ということを主にして考えると、民間資格よりも、国家資格であるフラワー装飾技能士を例にした方が分かりやすいかもしれません。(この資格は、国の検定を個人が受けて合格する必要があるので、先生に取ってもらう類の資格ではありません)
 フラワー装飾一級技能士の人がいたとしましょう。花屋の営業用の箔付けとか、フラワーデザイナーとしての箔付けにするために、この資格を取ったとします。
 ところが、厚生労働省が認める「技能士」の種類の見直しをして、フラワー装飾技能士を次年度から廃止、と決定し、事実上「技能士資格無効」を宣言したとします。

 国が宣言して廃止されたとしても、かつて一級技能士を取った事実は変わりません。一級技能士は、適当にやって取れる資格ではないので、制度廃止であろうが無効であろうが、その人は「技術のきっちりした人」です。
 その人に資格の有無を問えば、「フラワー装飾一級技能士でした」と言うでしょうが、そのインパクトは、「フラワー装飾一級技能士です」と言うのとなんら変わりません。自分の経歴に書く価値は、制度が廃止されても、1ミリも傷つかないでしょう。

◇しっかりした免状持ちには、「編入」が許されることがある

 いけばなの世界には無いのですが、プリザーブドフラワーの世界には、「他スクールから編入」という制度を導入しているところがあります(フラワーアレンジの世界には、あるのかどうか確認していません)。
 つまり、Aプリザスクールで指導者資格を持っていた人が、Bプリザスクールに入ってきた場合、本来は必須である初心者コースを飛ばして、いきなり「講師コース」みたいなところに入れる、という制度です。飛び級みたいなものですね。
 プリザの世界は、初心者が勉強する花材の下処理、素材の扱いなどの「基本的作業」が、どのスクールでもほぼ変わりないため(変わり有ったらおかしいくらいです)、このような制度が成り立つのだと思います。

 編入するにあたっては、Aスクールの指導者資格を証明するもの(免状そのものとか、講師証とか)をBスクールに提示し、手続きするのだと思います。
 もしも、自分の通っていたAスクールが無くなってしまったとしても、編入を認めているBスクールに証明書類を提出すれば、受け入れてくれるはずです。「あのつぶれた学校の生徒さんですか。お断りします」なんて、言われるはずはありません。
 編入に待ったがかかる可能性としては、Aスクールが、よほど問題の大きい営業方針、指導方針を持っていて、業界的にブラックな存在になっていたとか、業界の横のつながりが微塵も無いスクールで、「そんなスクールが存在したこと、確認できませんけど……??」というくらい細々やっていたところだったとか、要するに、Bスクールが「安心して受け入れられる」ような材料が絶望的に欠如している場合には起こり得ると思います。

 こういうことを考えると、「信用ある大手スクールに通う」というのは、それなりに意味のあることと言えるのかもしれません。

◇元から大したことない資格は……

 取っても取らなくてもあんまし変わんないな……みたいな資格が、世の中にはゴマンとあります。花の資格にかかわらず、数時間の講習を受け、形ばかりの実習をして、数千円程度払えば得られる資格って、あるものです。資格というより、実態は、「講習の受講証明」なのだと思いますが、名前だけは立派に「なんとかコーディネートマスター」なんて書いてあったりすると、知らない人は、大層立派な技術があるものと錯覚したりします。

 そのような資格は、それだけで仕事にしたりするものではないので、取って数年後に発行母体が無くなっても、慌てふためくこともありません。市民講座にちょっと通ってみた、くらいで取った資格ならば、受講料が無駄だったとも思わないでしょう。受講中が楽しかったなら、それで元は取れてるでしょうから。

 このように、最初から「大したことない」のであれば、何がどうなっても、結局その資格は「大したことない」のです。

◇母体スクールが消滅した資格は、履歴書に書いてもいいの?

 花の資格を履歴書に書く機会自体、あまり無いかもしれませんが、花関連の仕事につく場合には、書くこともあります。
 そんなときに、すでに母体スクールが消滅した資格を書いても良いのかということになりますと、これは、各人の見識に任せられることだと思います。

 でも、「そんなの、君の自由だ」というのもあんまりなので、seiならどうするかという、管理人の私見を書かせていただきます。
 私なら、そのときの書類提出先を考え、書いたほうが有利そうだと思ったら、書くでしょうね。ただ、「以前に存在した資格で、今は無い」ということが分かるように書くと思います。
 業界の人が、大体みんな知っているような資格なら、大概書いて大丈夫だと思います。

 わざわざ書かなくてもいいか、と思うとしたら、あまりにも知名度が低くて、母体スクールが健在だったところで力不足っぽいような資格でしょう。
 でも、そのような「力不足資格」であっても、何としても空欄を作りたくない書類だったら、書いちゃうと思います。

 履歴書を受け取る側のことを想像すると、「以前にあった資格だな」と分かっても、それをマイナス要素と捕えること無いだろうと思います。最悪、「書いてもプラス要素なし、空欄と同等」と思われるだけで、「もう無い資格を書くなんて、非常識な人だ」ということにはならないはずです。

 花の資格は、法律で決まっているものでもないし、営業に使うときも、役所への届出が義務付けられるようなものでもありません。そういう意味では、花の免状は、かなりファジーな書類なのです。せっかくお金を払って取得したなら、どこまでも自分の有利なように活用しましょう。


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