◆花の「プロコース」を出れば、誰でもプロになれるのだろうか?

 多くの花のスクールには、「プロコース」というものがあります。フラワーアレンジメント、いけばな、プリザーブドフラワー、ハーブなど、ほとんどのジャンルのスクールに「プロコース」はあり、受講さえすれば、あなたもプロ!といううたい文句を掲げていることが多いです。

 そのようなプロコースに通い、真面目にレッスンを受けたなら、誰でもプロになれるものなのでしょうか? そもそも、プロコースを設置する側は、どの程度プロ育成に熱心なものなのでしょうか。

 これからプロコースに入ろうか、と検討する方は、花の世界に夢を持ち、勉強する熱意も持っている方だと思います。
 そんな方のために、花のプロコースが、どの程度「プロになる力」を与えてくれるものなのか、管理人が考えているところを書いてみようと思います。

スポンサーリンク

◇花の「プロコース」にも、色々なパターンがある

 花のプロコースというものは、色々あります。ちょっとネットで検索すれば分かりますが、どれが何やら、わけが分からんほどたくさんあります。
 コースの名称は、各スクール、団体で様々ですが、
  • プロフェッショナルコース
  • エキスパートコース
  • スペシャリストコース
  • マスターコース
  • クリエイターコース
など、「ただのお稽古事よりも、もっと本格的な講座なのだな」と、素人の目にも分かるようになっているものです。

 しかし、このような名称だけ見ても、「どの程度本格的なのか」ということは、わりと分からないものです。これは、素人ばかりか、コース名だけでは、花のジャンルをある程度知っている人にも見極めが難しいです。

 花のプロコースは、「同じくらい本格的に見えるコース名」であっても、それぞれ本格の度合いが異なるものなのです。
 大きくパターンに分けると、
  1. 教えられる資格を出すシステムがあるので、プロコースと称している
  2. 一般コースよりも、一段上の技術を教えるので、プロコースと称している
  3. スクールや団体の中でも、えり抜きの優秀人材を育てる「選ばれしコース」なので、プロコースと称している
 上記の3つくらいなると思います。上の「1」なんかは、大抵の花の教室がそれをやっていると思うので、特別なことでもなんでもないのですけど、それでも「プロ=有資格者」と考えれば、「プロを生み出します」という言葉に嘘は無いので、そこを売りにするという作戦もアリなのでしょう。

◇パターンその1……「資格が取れるコース」=「プロコース」としているレッスン

 上の項の最後にも、ちょっと書いてしまいましたが、「資格出せます」というだけの理由で、「プロ育成」といううたい文句で宣伝する教室もあります。「有資格者=プロ」と定義すると、別に嘘でも誇大表現でもないので、誰にも文句は言えません。実質は、「すごく普通な花の教室」ですけど。

 無資格から始め、一日でも早くプロになりたいと思っている人が、この教室に入った場合、「実質」が分かったときには、ちょっとがっかりするかもしれません。結局、プロになるために教室が力になってくれることは、資格を出してくれることだけなのです。
 しかし、私の知る花のプロの皆さんの多くは(私自身もそうなのですが)、「何の変哲も無い、町の稽古場の出身」です。なので、どんな教室であれ、そこで腕は磨けるはずとは思います。
 腕を磨いて資格を取り、自分で教える看板を出し、創作活動もする……というのでいいじゃないかと思いますが、「プロコース」にこだわって講座を探している人には、あまり満足できない道なのかもしれません。

◇パターンその2……「一般コースよりも一段質の高いレッスン」=「プロコース」としているレッスン

 「一般コース」「ベーシックコース」みたいなところで、いわゆるお稽古花を毎回するのでは、すでに物足りなくなってしまった……という方が行くようなコースです。なので、上の項の「パターンその1」のような、「まったくもってフツー」という教室ではありません。
 こういうレッスンは、スクールや団体が直募集する教室にあったり、大人数を抱える教室の先生とか、キャリアを積んだ生徒さんが多い教室の先生が設置していたりします。

 レッスンの特徴としては、
  • 特殊花材を扱える
  • 特殊なスタイルを教えてもらえる
  • 特殊なシチュエーション(ブライダルの花飾り、とか)を設定してもらえることもある
  • 特殊な現場の見学をさせてもらえることもある
  • 花材・資材・レッスン料とも、一般コースよりはお高い
などです。
 このようなコースのメニューは、一般コースを習っている人間から見ると、「うらやましーなー」と思えるものばかりです。実際にコースを受けると、大変だけど楽しい、と思う人がほとんどだと思います。

 楽しいのは結構だし、習ったことは必ず糧になると思います。しかし、この記事で問題にしている「プロになるために、どんな力になってくれるのか」ということになりますと、「経験値をほんのちょっと上げてくれただけ」みたいなものだと思います。プロになりたい人なら、ぜひとも経験したいようなメニューは多々含まれているだろうと思いますが、そこから「プロになるための分かりやすい道」はなんら開かれません。

 私は、「プロになるためには、このような講座は不要だ」と言っているのではありません。実際に、このような講座をきっかけにして、プロに進んでいく人はいるのです。しかし、そういう人の多くは、講座きっかけで視野が広がり、テンション上がり、行動力もアップして、プロへの道をリアルに模索し始めるのです(リアルっていうとこ、重要!!)。
 このようなタイプのプロコースの使命は、「自分だって、リアルな模索ができるのだ」と、本人を覚醒させることなのかもしれません。

◇パターンその3……「スクールや団体の中で、選ばれた人がだけが受けられる高等教育」=「プロコース」としているレッスン

 各種フラワースクールとか、いけばな流派の中で、その運営本部が少人数を集めてハイレベルなレッスンを受けさせるタイプのコースがあります。このようなコースは、やる気のある人たちの応募が殺到することが多く、募集人数を大きく上回る人が集まってしまった場合、経歴や能力でふるいにかけられ、優秀な人しかとらないことも珍しくありません。
 なんで応募が殺到するのかと言えば、コースのメニュー自体が魅力的なことはもちろんですが、「有名な○○先生の指導が受けられる」とか、「有名な○○先生も、このコースの出身だ」という理由もあるはずで、人によってはそっちの方が主だったりします。
 特に、○○フラワースクールの本部講師のほとんどが、このタイプのコースの出身者だというような場合には、本部講師を目指す人は、当然このコースに応募してくるでしょう。

 このタイプのコースの特徴としては
  • 講師もメニューも一目で分かるほどハイレベル
  • 良質の花材を扱える
  • 良質の資材を扱える
  • 特殊なスタイル、特殊なシチュエーションの花が学べる
  • 一般の教室では到底出来ない経験が複数積める
  • そこそこ本格的に活動している先生でも、なかなかできないような経験が複数積める
  • 受講料は、かなりお高い

 このようなコースは、募集要項などに明記はされねど、「要は幹部候補発掘目的ですから」という気配が色濃いことがあり、その場合は、スクール・団体内で上に行きたい人には見逃せないものになります。
 このタイプのレッスンは、スクール・団体が力を注いできますので、本気で受け、絶対に無駄にしない決意があれば、後の花人生の大きな糧になるでしょう。

 「プロになる力」としてはどうなのか、と言えば、ここまで来ると、「受講者次第」なのだと思います。
 ここまできたら、さすがに「プロへ直結」なのかと思いきや、このレベルだからこそ、受講者次第なのです。

 このような講座の最後にあるものは、プロの仕事をゲットするための就職相談会ではありません。
 たしかに、「幹部候補選び」を目的とした講座なのであれば、スクール・団体は、受講者の中の、「使えそうなやつ」を探すでしょう。しかし、その結果選ばれるのは、恐らく2〜3人程度です(何百人受講しようが、2〜3人だと思います)。その2〜3人に選ばれるために全力を尽くすのも、一つの道とは思います。そこを足がかりに、プロ中のプロになっていく人もいるでしょう。(でも、本部講師みたいなポジションになっても、それで食っていくのは難しいですよ。当サイト内の、こちらの記事をご参考に→フラワー組織の中枢で講師になる

 しかし、9割以上の受講生は、受講して終わりなのです。受講して得たもので、本人が戦っていくしかないのです。真面目に受講すれば、得たものは相当大きいはずですので、

「こんなに大きな武器を持たせてあげましたよ。すでに君たちは自分で戦えるようになっています。はいガンバって!」

というのが、講座の最後に待っているものです。
 スクール・団体の側に、大きな武器をくれるつもりは十分にあるので、まともに真面目にそれを受け取り、賢く使った受講者には、「思い返せば、あの講座のおかげで道が開けた」という未来も大いにあり得ます。このセリフを未来に言いたければ、受講した時間すべてを財産にせねばなりません。財産にする能力と気概がある人にだけ、この講座はプロへの道を開くのです。受講さえすれば、すべてがうまくいくと考えるようなやつには、この講座は道を示しはしないのです。

◇レベルの高い講座を受けただけで満足していては、なかなかプロにはなれない

 夢を持って、「あのコースを受ければ私も……」と思っている方をがっかりさせてしまうかもしれませんが、「コースを受講すること=プロになること」と言い切れる、プロ製造率100パーセントなプロコースはありません。
 でも、これは別に嘆かわしいことではなく、あったらおかしいことなのです。ある講座に入りさえすれば、私のプロ人生ばら色と思っている人がいるとすれば、相当に世間知らずの人だと思います。

 まったくの私の勘で言いますと(根拠無くてすみません)、花の教室で受講生からプロが出る率など、1割以下だと思います。花の教室にも、アレンジ・いけばな・プリザなどいろいろありますが、どんなジャンルでも一割以下だと、私は思います。よほど高額の受講料を払った、マンツーマン指導の特殊なものだったら分かりませんが……そんな講座あるのかどうか知りませんが……それでも、3割までいかないと思います。

 レベルの高い講座を受けることは、無駄なことのはずは無く、有益なことが多いはずです。少なくとも、「行く前と、技術も意識的なものも、何も変わらない」ということは無いと思います。むしろ、技術の習得・経験・人との出会いで、満足を得られる方がほとんどのはずです。

 しかし、そこからプロへと考えているのであれば、講座が終わって満足したときこそ、道を開くために立ち上がってください。プロコースを学んだあなたは、丸腰ではありません。あなた独自の戦い方が、必ず見つかります。

◇「プロコースのレッスン」だけでは、技術習得の時間が少なすぎると思え!

 一般レベルよりも上のランクのフラワー講座に通うと、講座の主催者側は、
「あなたたちは、普通とは違うハイレベルの勉強をしているのだ」
「こんなハイレベルの勉強をしたら、滅多に得られないスキルを得ているはずだ」
「あなたの腕は、当然世間に通用する」
 というようなことを言うものです。

 たしかに、「講師陣だけでもすごいな」という講座や(草月の造形クラスなど、芸大に迫る講師陣です)、プロでもなかなか触れない素材に触れる講座もあり、「講義レベルがすごい」ことに、嘘は無いのだとは思います。
 しかし、それを鵜呑みにして、「明日から、私は花のプロとしてお金をもらえるのだ」と思うと、とんでもない痛い目に合うこともあります。

 せっかく高度なレッスンを受けたのだから、それを自信に変えていけないことは無いと思いますが、心のどこかに、クールで謙虚な自分をキープしておきましょう。
 たいていの花屋から見ると、花の先生たちの知識や振る舞いは、一般の素人とあまり変わりがありません。なぜ、あれでプロ意識だけ持っているのだろうと、不思議に思えることだって少なくありません。(花屋よりも先にいけばなの先生であった私が言うのですから、間違いないです)

 大体が、花のプロコースというものも、ほかのジャンルの「プロになるためのスキル習得」に比べたら、時間も労力も少ないことがほとんどなのです。
 プロコースのレッスンの多くは、月に1〜2度程度です(受講料が高額なことと無関係ではないと思います)。週一ペースなんて、あまり聞いたことがありません。
 仮に週一だったところで、「練習」の頻度としては、ずいぶん少ないと言うべきではないでしょうか。
 世の中の、「プロになるためのスキル習得をがんばっている人」というのは、毎日練習するのが普通なのです。うそだと思ったら、ピアニストや美容師や、料理人の方に聞いてみたらいいです。
 ハイレベルなプロコースを受講するのも結構ですが、毎日の地道な自主練習をしなければ、ギャラをもらえる腕になんて、なかなかなれないのだと思うべきです。

◇「レベルの高い講座で勉強した」とアピールしても、世の中的には「ふーん」で済まされると知れ!

 特定のジャンルの人たちの中では、「おっ」と思われるようなハイレベル講座出身でも、世の中の人にそれが通用することは少ないです。あと、名門の教室出身であることも、世間では「ふーん」で済まされます。

 がんばって勉強してきたことを、もっと認めてほしいな、と思うかもしれませんが、現実なんてそんなものです。
 花の世界は、お上品な奥様方が多いので、普段から互いをほめあって、それを挨拶代わりにしているようなところがあるので、「褒められ慣れる」ということがよく起こります。要するに、「勘違い野郎」を生み出す土壌が豊富なのです。
 私は、絶対に勘違いなんかしない、と思っていても、「褒められ慣れる可能性大」であることを、忘れてはいけません。

 私見ですが、現状では、花の習い事の世界で、本当にビジネスとして通用する人材を育て上げられるプロ講座なんて、「無」に近いような気がします。ビジネスでは許されないことが、「ハイレベルのお教室」では、大概許されてしまいますから。

 また、花屋目線から言いますと、ずいぶんいろいろな経験をつんでいるはずの花の先生でも、実際に一緒にやってみると、「合理性とスピードに欠ける」と思うことが多いです。これ、花屋さんの共通見解だと思います。
 「合理性とスピード」は、花をビジネスにしたときには、とても大切なものです。なのに、お教室ではこれをほとんど訓練しないのです。
 スピードに関しては、花を納品するプロから見ると、ほとんどのレッスンプロが落第です。「超一流のレッスンプロ」でも、落第生が大勢居ると思います。
 プロコースを受けるなら、「自分が今受けているこの講座のスピードは激遅だ」くらいに思っておいたほうが良いです。

◇まとめ……「受けただけ」では終わらせない気概を持て!

 たいていのプロコースは、お金と時間を注ぎ込めば、ほぼ誰でも受けられるし、卒業できます。その事実を、世間は気づいていますよ! 気づいていないのは、意外にプロコースに通っている人たち自身かもしれません。
 受けるだけなら誰でもできる。ならば、受けただけで終わらせてはダメです。
 この講座を受けさえすれば道が拓けるという、安易な気持ちは捨て去り、自分はやっと武器を手にしたのだと思って、自分のスキルで戦う決意をしてください。
 それが、正しいプロコースの活用法です。




Copyright(C)2004.09.15-. 花の情報局.All Rights Reserved.