◆名前や住所などを明かさずに、花ギフトを贈れるのか?

送り主,書かない

 フィクションの世界では、「見知らぬ誰かから花束が届く」というシチュエーションが、ロマンチックに描かれることがあるものです。
 しかし、実際問題として、人に自分の名を隠して花を贈ることはできるのか、また、名を隠して花を贈ることはいいことなのかどうかを、この記事では考えてみたいと思います。(ミステリによく出てくる「差出人不明の届け物」とか、「漫画:ガラスの仮面の紫のバラは、匿名届けの注文だよね」、という話を友人としたために、このような記事ができました)

(1)自分で相手の家に届け、黙って置いて来ればできるが……

 匿名で花を贈ることは、アナログな方法ほどやり易いです。早い話が、家の前に黙って置いて来ればできてしまいます。
 しかし、今日びこれをやるのは注意が必要です。やるなら、一目で贈り主が分かるような何かがあるか、後で「贈ったのは自分です。びっくりした?」という連絡を入れるか、どちらかをおすすめします。

 特に、都会では、必ず最後には贈り主の種明かしをするべきです。でないと、最悪ストーカーかもしれないと思われたり、後で贈り主が分かったときに、「あの人気持ち悪い! いい人だと思ってたのに」などと、評判を落とすことにもなりかねません。
 貰う側が不安を覚えるのは、

  • なぜ、贈り主は名乗らないのか
  • 妙なやつに住所を知られたのだろうか
  • 別の家と間違えたのではないか(宛名も書かなかった場合)
↑のような点です。本当にまったく心当たりがない場合には、女性だけでなく、男性でも気持ち悪いと思います。「誰かが私を愛してくれている」と受け取る人がいるとすれば、そいつは相当おめでたいです。

 このように、「個人⇒個人」の匿名フラワーギフトは、リスクが大きいです。相手が確実に喜ぶ確信がある人だけが実行するべきではないでしょうか。

(2)花屋さんの店頭で、「匿名」の配達は頼めるのか?

 町の花屋さんが、匿名の配達を受けるかどうかは、各店舗の考えによって異なると思います。匿名でも、ニックネームでもOKなお店は存在します。

 ただし、注文するときに、
「もしも先方が受け取り拒否なさったら、無理に押し付けることはしませんが、その点ご了承を」
と釘を刺されます。しかも、先方に受け取ってもらえなくても、商品を作って持参しているのですから、どんな温情あるお店でも返金はしません。
 「断られても、このお金は返さないよ、いいね」ということになりますが、それでもかまわぬという人は注文できます。

 匿名など絶対お受けできない、というお店もあるので、そういうときには店頭でゴネるのはやめて、おとなしく受けてくれる店を探しましょう。
 でも稀に、人情家の店長が事情を聞いて、つい受けちゃうこともあったりするので、人を説得しうる理由を持っているなら、ざっと説明するのもアリはアリです。
「生き別れた妹の二十歳の誕生日なんですが、私は姉だと名乗ってはいけないと言われている」
とかね。(でも嘘はやめようね)

(3)「ニックネーム」「ハンドルネーム」で贈るなら、やや可能性が増える

 まったくの匿名は受けないが、ニックネームやハンドルネームならOKのお店はあります。要するに「ダレダレ様からです」と言えるようになっていればギリギリ受ける、という姿勢ですね。

 しかし、これも上の項と同じく、受け取り拒否される可能性のことを説明されると思います。そして、匿名の場合と同様に、「受け取り拒否されても返金しない」ことは変わりません。それを承知で注文してください。

(4)堂々と偽名を使われたら、花屋さんには分からないし、断れない

 自分が何ものか明かしたくないだけなら、偽名を使っちゃうのが一番話しが早いです。店頭で注文を受けるときに、身分証明書などの確認はしませんので。
 ただし、本当に適当な偽名だと、贈られた側が混乱する可能性が高いので、これもかなりリスクの高いギフトです。贈られる方本人に「知らない人だ」と言われてしまったら、受け取り拒否を食らうこともあるでしょう。もしかしたら、完全な匿名の方が、まだしも先方の印象としてはマシかもしれません。私ならおすすめしませんね……てゆーか、やめた方がいいでしょうね。

 偽名で先方に着いてもセーフなのは、一部の贈りものの主旨を暗示するような偽名です。
 たとえば、「伊達直人」で、児童福祉施設に贈るとか。
 花屋さんは、
「伊達様ですねー、かしこまりました」
って言うだけです。気付いたとしてもニヤッとするだけでしょう。なんなら、ジャービス・ペンドルトンでも結構です。(アナタ日本人デショ、とは花屋さんは突っ込みません)
 季節と送り先によっては、「サンタクロース」もアリかもしれませんね。

(5)「あなたのファンより」で注文できるのか?

 記事の一番初めに書いた「漫画:ガラスの仮面の、紫のバラの人」ですが、これは簡単に言うと、『ガラスの仮面』と言うマンガの中で、女優さん(ヒロイン)の楽屋に「あなたのファンより」と書かれた紫のバラの花束が届く、というものです(実は、ヒロインのリアル知人が名を伏せて贈っている)。

私の遠い記憶によれば、配達した花屋さんは、紫のバラの人の正体を知りたがるヒロインに、「口止めされているので言えない」というセリフがあったように思います。

 このように、舞台の女優さんに、「あなたのファンより」で贈る注文は、一種の匿名ではありますが、受ける花屋の方が多いと思います。でも、品物以外のところで発生するリスクを嫌う花屋とか、過去に匿名で大クレームに繋がった経験のある花屋だと、かたくなに断られることもあるでしょう。
 あと、Webサイトを持っていて、そこで「匿名は受けない」と明記してしまっていると、匿名は全件NGという店もあると思います。

(6)ネット花屋から、匿名で花ギフトを注文できるのか?

 ネット花屋も、実店舗の花屋と同様に、店によって受けるところも、受けないところもあります。
 たとえば、日比谷花壇や、第一園芸は、「匿名NG」を明記しています。
 反対に、「匿名OK」を明記しているのは、フラワーファームや、宅配花屋さん花RiRoです。

 多くの花屋さんは、「匿名が可能かどうか」を、特に明記していませんが、正直うれしい注文ではないはずです。宅配便で送るケースは、送り状の「送り主欄」が空白では、宅配業者が断ってくることがありますから、花屋はそれを理由に断ります。
 また、「匿名OK」なネット花屋も、実店舗と同様に、「受け取り拒否でもお支払いはしていただく」が前提であることをお忘れなく。

【匿名OKではないけど……】
 匿名OKとはちょっと違いますが、花急便は、贈り主の住所・電話番号を伏せてくれます。飲み屋のおねーちゃんに贈るときに、こっちの電話番号を知られたくない、みたいなときに活用できると、サイトのQAにばっちり書いてあります。(花急便のQAには、このような妙に具体的な例があっていろいろ面白いので、一度読んでみると楽しいです。ここまで「具体的」な店はなかなかありません)

(7)匿名サプライズは、贈り主のノリに、相手がついていけないこともあると思うべし

 私が、ごく身近な範囲の女性たちにリサーチしたところ、「匿名のフラワーギフト」には、良い印象を持つ人はいませんでした。たとえ恋人や夫からであっても嫌だ、という声さえ聞かれました。つまり、匿名の花ギフトを、「ワクワクするサプライズ」とは思わない人の方が圧倒的に多いということです。
 私個人の考えを言うなら、「一目で贈り主が分るなら、それも面白いかな」という感じです。本当に贈り主不明なものは、私もイヤですね。

 よって、「びっくりさせてやろう。喜ぶだろうなあ」とノリノリで届けても、どん引きされる可能性があることを理解しましょう。このことは、「男性⇒女性」のギフトに限りません。同性間のギフトであっても、どん引きのリスクはあります。

 また、「絶対に贈り主がだれかわかってくれるはずだ」と思っても、相手方はそうは思わない、というパターンもあります。サプライズの計画は、えてして「予定通りにサプライズが成功する」ことを前提にして立てられるものですが、うまくいかない可能性もあるのではないかと、一度はクールに考えたほうかよろしいかと思います。

(8)お葬式関係は、どんな理由であってもやめた方がいい

 お葬式に、匿名・ニックネーム・ハンドルネームのお花はやめましょう。決してふざけているのではなく、「その方が良いと思える理由がある」のであってもやめましょう。どんなに常識はずれと非難されても言い訳できません。仮に、「ハンドルネームで、最も深い絆を結んだ」のであっても、です。
 本名でない葬儀の花を出しても許されるのは、芸名とか、筆名で社会に認知されたような人だけです。

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