◆ボーダーカーネーション  刑事コロンボ「黒のエチュード」

 この作品は、刑事コロンボの10作目のエピソードです。一輪のカーネーションと、それを育てた女性だけが、コロンボを犯人逮捕に導けるという、花が重要な役割を果たすドラマです。

 カーネーションを育てている女性は、犯人の奥さんです。育ちの良いお嬢さんで、才能のある指揮者の夫を愛しています。しかし、夫の女性関係には、かねてから疑いを持ち、その部分には神経質になっています。コロンボは、彼女の前で「ご主人は被害者の女性と親しくしていた」と言っただけで(関係があったとか言ってないのに)、嫌われちゃったりします。

 彼女は、オーケストラの指揮をする夫のために、ボーダーカーネーションを育てています。(日本語の吹き替えでも、ちゃんとボーダーカーネーションと言っています)ボーダーカーネーションは、花が少し小さめなので、男性が胸に一輪挿すには、ちょうど良い大きさです。ぼてっと頭が大きいカーネと違って、粋なサイズなのです。
 犯人のオーケストラ指揮者:アレックス・ベネディクトは、自分が指揮をするコンサートの直前に、邪魔になった愛人を殺す計画を立てます。何も、そんな忙しいときに殺さなくたっていいだろうと思いますが、これはアリバイを作るために必要なのです。彼は、コンサート会場の楽屋を抜け出し、自動車修理会社に忍び込み、あらかじめ故障してもいないのに「故障した」と言って預けておいた自分の車に乗って愛人のもとへ向かいます。要するに、密かに車を使って移動時間を捻出し、アリバイを成立させようという作戦です。
 彼は、首尾よく愛人を殺し(自殺に見せかけます)、車を再び修理会社にそっと返し、何事も無かったように、自分の楽屋に戻ってスタンバイしています。
 しかし、彼は愛人宅で、痛恨のミスを犯していたのです。いつものように、妻が用意してくれるカーネーションを胸に挿して出かけたのに、それを殺人現場に落としてきていたのでした。
 私なんて、そんなことに気づいたら、ショックでぶっ倒れると思うのですが、さすが、計画殺人の犯人さんは違いますね。
 警察の人間がひしめく殺人現場に堂々と乗り込み、何食わぬ顔をして花を拾って胸に付けます。
 彼の愛人は、彼の指揮するオーケストラの一員だったので、彼は「同じ職場の人間」として現場に駆けつけ、落ちている花を見つけ、誰も見てない隙に、ささっと拾うんです。
 この大胆な犯人を、コロンボがどうやって追い詰めるかは、見てのお楽しみにしていただきたいのですが、これからDVDを借りて見ようという方、もしくは、「刑事コロンボ:コンプリートDVD-BOX」をもう一度見返そうなどというコロンボマニアの方は、犯人:ベネディクトの胸のカーネーションを注意してごらんになってみてください。
 ……これね、私は何度も、何度も、何度も見て分からないんですけど、花の形が「造花か?」と思えるようなきれ〜な円形をしているんです。生の花にしちゃ、きれい過ぎるように見えるんですよ。でも、ボーダーカーネーションなんて、それほど珍しい花でもないので、撮影のために買ってくることなんて、ちっとも難しくないはずなんです。私は「造花と見違えるほど良い品物の生花」である確証をつかもうと、画面にへばりついて見つめるのですが、画質のせいで、見極めるところにまで至りません。
 でもねえ、花職人の勘が、「造花じゃん?」と告げてくるんだよなあ。造花くさいなあ。
 ボーダーカーネーションは、犯人の奥さん:ジャニスがそうしているように、特にハウス栽培する必要の無い、花壇用の品種です。種から作るなら、6月に風通しの良い、半日陰の場所に種まきします。肥料が好きなので、切らさないように注意してください。
 ドラマの中盤で、ジャニスが作っているカーネーションの花壇も画面に登場するのですが、丈の低い株に、薄ピンクのカーネーションが、びっしりと咲いています。
 これも……造花だと思うんだよなあ。
 ベネディクトの胸の花も、花壇の花も、整ってきれい過ぎる。日本の生産者さんが、まるで人間の子供を育てるようにしてつくった品物に、たまにこのくらいきれいなものがあるけども……。「カーネーションの謎」の真相はどうなんでしょうね?

◆DVD:刑事コロンボ 完全版 vol.5
「黒のエチュード」と「パイルD−3の壁」が収録されています。



Copyright(C)2004.09.15-. 花の情報局.All Rights Reserved.