◆オコティーリオ  エラリー・クイーン「第八の日」

 オコティーリオなんて花の名前、聞いたことが無い方がほとんどでしょう。この花は、ミステリの巨匠エラリー・クイーンの『第八の日』に登場します。

 ミステリ好きな方はご存知でしょうが、クイーンは、手がかりをすべて読者の前に開示して、フェアな犯人当てを目指したミステリ作家として有名です。非常に論理的な謎解き場面が堪能できる作品が多いのです。
 そのクイーンの作品の中で、この作品は超異色作です。なんか、「神の話」なんか出てきちゃって、ネバダ砂漠の真っ只中の、ちょっと不思議的な宗教コミュニティの中で殺人が起こります。しかも、主人公である探偵・エラリーが、ちょっと神様扱いされて、拝まれたりしているので、純なクイーン好きは、事件が起こる前に、物語の雰囲気におののいて読むのをやめてしまったりするそうです。
 私は中学生くらいのときに読みましたが、クイーン作品としてはあまりにも「変わっている」ので好きになれませんでした。
 ただ、記憶に残ったのが、物語の冒頭に出てくるオコティーリオの花のこと。(中学生のときにはすでに立派な花マニアでした)
 だって、聞いたことも無かったんですもの。図鑑で調べても、オコティーリオの名前を見つけることはできませんでした。
 それから大人になるまで、私はたまに思い出してはオコティーリオについて調べましたが、長年この花の謎は解けず、ミステリは深まるばかりでした。
 私がついに謎の真相を解明したのは、30歳を目前にした頃でした。大型書店の英和辞典(大きくて、漬物石みたいに重いやつだった)の中で、オコティーリオocotilloという項を発見したのです。属名が出ていたため、植物図鑑で検索することができました。
 どうも、オコティーリオという名は、インディアンたちが使う土俗的呼び名だったようで、そのために捜査は難航を極めたのでした。
 オコティーリオは、一般的にはフキエーラと呼ばれます。北米砂漠地帯特有の花で、ネバダ砂漠の物語には、ぴったりの舞台装置でありました。トゲトゲの枝分かれしないタイプの低木で、キャンドルウッドと別名されるほど、鮮やかな赤い花を咲かせます。写真も見ましたが、殺風景な砂漠の中に、火のついたような朱色が映えて、「砂漠の灼熱の中で幻に出会った」ような体験をする物語の前振りとしては、絶好の植物であると言えます。
 『第八の日』は、熱烈なクイーンファンの中でも評価が分かれる問題作です。一度読んでごらんあれ♪

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【「第八の日」データ】
◆原題: And on the Eighth Day
◆1964年刊
【邦訳:出版状況】
青田勝訳 「第八の日」 ハヤカワ・ミステリ文庫(早川書房)1976年刊




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