◆フラワー教室の先生の収入を試算してみよう

 花の教室の先生というのは、一昔前までは、小遣い稼ぎ程度の収入にはなるものでした。
 しかし、現在では、なかなか小遣い稼ぎにもなりません。正直言いまして、各流派とか、スクールの中で「そこそこ有名な先生」くらいの地位になっても、花のレッスンで儲けている人など数えるほどです。

 じゃあ、花の先生はどのくらいのお金になるものなのか?というところを、試算してみました。これから花の先生になろうという方は、参考にしてみてください。
 ちなみに、私は花の先生業を本業にすることは、どなたにもお勧めしません。「趣味として楽しみましょうよ」と申し上げたいです。
 「本業にはするな。ほとんどの人は花では食えない。運よく食えるようになっても、金持ちにはなれない」これが、私の心からのアドバイスです。

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【1】まずは、単純な試算をしてみます

 花の教室というのは、実はいろんな収入のパターンがあります。その中でも、一番単純なパターン=「自宅でレッスン料を取って教えている」で年収を試算をしてみましょう。現時点で平均的と思われる月謝6,000円(東京値段です。地方はもっと安いかも)で算出します。

●生徒数5人だと年収は……6,000(月謝)×5(生徒数)×12(ヶ月)=360,000円
●生徒数10人だと年収は……6,000(月謝)×10(生徒数)×12(ヶ月)=720,000円
●生徒数20人だと年収は……6,000(月謝)×20(生徒数)×12(ヶ月)=1,440,000円

 場所代や水道・光熱費などを考慮に入れずに単純に考えるとこうなります。おお、すごく良いじゃん!と思うかもしれません。
 ……私も思いますね。机上の計算って、すごく良いじゃんって思います。実際には、20人なんてそうそう集められないです。いえ、5人も難しいのが現実です。特に都会では、花の先生は飽和状態ですから、一人でも教えていたら「あの人はよく頑張っている」と言われます。
 つまり、花の教室で100万超えの収入は、相当難しいし、相当な数のライバルを蹴落とさなければならないということです。

 参考までに、上のような単純計算で、世間の「平均年収」と肩を並べるには何人の生徒数が必要なのか計算してみましょう。
 2016年の二十代の平均年収は、国税庁によると296万円だそうです。296万円にもっとも近いのは……
●6,000(月謝)×41(生徒数)×12(ヶ月)=2,952,000円

 41人ですか……。私、指導始めて25年たつけど、41人なんて数字、死ぬまでに達成できないんじゃないかと思います。

【2】月謝1000円違ったら、年収は大いに違う

 上の項では「月謝6,000円」で計算しましたが、この数字を変えると、年収もかなり変わります。
 月謝5,000円で、10人教えているとすると、

●5,000(月謝)×10(生徒数)×12(ヶ月)=600,000円

 6,000円の月謝の教室と比べると、12万円少ない年収です。
 反対に、6,000円より高く、たとえば月謝7,000円で運営すると、

●7,000(月謝)×10(生徒数)×12(ヶ月)=840,000円

 6,000円の月謝の教室と比べると、12万円多い年収です。
 月謝5,000円にした先生と、月謝7,000円にした先生とでは、年収に240,000円の差がつきます。
 お月謝というものは、先生自身が運営している教室なら、先生自身が決めます(カルチャーセンターのように、運営元がほかにある場合は別)。なので、
「6,000円にしようかしら」
「5,000円でいいわよね」
「儲けるつもり無いもの。3,000円でいいわよ」
くらいの感じで決められるんです。月謝3,000円にした先生は、月謝6,000円にした先生の半分しか稼げません。
 じゃあ、私は稼ぎたいので月謝20,000円!とか思っても、それで入門者が集まらなければ、月謝3,000円の先生の方が年収が上になるかもしれませので、適正なお月謝の額は、個々に見極める必要があります。

【3】場所代がかかるかどうかで収入激変

 上の項までは、「自宅で教え、教室からは入ってくるお金だけがあり、出て行くお金はない」ものとして試算しました。
 しかし、現実には多くの教室が、会場を押さえるための経費をかけて運営されています。貸しスペースを借りている先生もいれば、教室用にマンションの一室を持っている先生もいます。

 現在の日本で、フラワー教室の運営にかかわる経費でもっとも大きいものは場所代です。ここでは、貸しスペースを借りている場合の試算をしてみます(マンションの一室を所有するよりも一般的だと思うので)。

 私が東京在住なもので、東京値段で試算しますね。
 貸しスペースの値段は、足で探しに探すか、人脈を駆使して探したとして、「1H 2,000円」くらいが底でしょう。東京なら、1H2,000円が見つかれば運が良いです。
 1H1,000円は、無いと思ったほうが良く(運よくそういう場所にめぐり合ったら、速攻確保することをお勧めします)、反対に、高い方向には天井がありません。
※世間に1H 2,000円を下回るレンタルスペースは結構あります(狭いけど)。しかし、花の教室は、そういう場所では運営しにくいです。水を使うことを嫌われたり、道具・資材を置かせてもらえないことがほとんどです。特に、いけばな教室がやりにくいです。プリザーブド教室なら、「結構せまい&資材はその都度持ち込み」でもやれるかなと思います

 でも、まずは運よく1時間2,000円のスペースをゲットできたものとして試算しましょう。月に三回、一回あたり2時間借りるとして、月当たりにかかる金額は、

●2,000(場所代)×2(使用時間)×3(月の使用回数)=12,000円
 月謝6,000円の教室なら、二人分の金額が場所代で消えます。月謝5,000円なら、二人分では納まりません。月謝3,000円の教室なら、4人分がかかります。
 場所代12,000円を12ヶ月分はらうと、144,000円。この金額を、【1】で計算した年収から引いてみてください。
 また、ここでは計算に入れませんでしたが、家から遠い場所だと交通費がかかります。生徒数が少ないと、交通費も地味に教室の経済を圧迫します。

 上の試算から、金額を減らすことを考えるなら、場所代のもっと安いところを探すか(すごく難しいけど)、使用時間を減らすか、月の使用回数を減らすか、しかありません。
 使用時間を1時間に減らすのは、非常にキビシイですね。実質、30分程度の稽古しかできなくなりそうです。月の使用回数を減らすのは、月謝の金額を抑えることにつながる可能性がありますので、うまく月謝と場所代のバランスをとる必要があります。

 場所代は、「一時間いくら」という計算ではないところもたくさんありますので、上の試算は一つの例です。
 しかし、私が今まで見てきたところ、大体どんな料金体系でも、「生徒さん数人分の月謝は場所代で飛ぶ」と考えた方が良いです。つまり、5〜6人教えているのではほぼ儲けにならず、10人超えてやっと「小遣い銭」程度になってくる感覚かと思います。
 そして、業界の外の人には、あまり信じてもらえませんが、場所代で赤字の教室を運営している先生は、結構な数で存在しています。
 ……赤字でやめない理由ですか?
「いつか黒字にしたいと頑張っている」
「生きがいである教室を閉めるなんて哀しすぎる」
「あの先生、教室つぶしたらしいよ、とか言われたくない」
「教室運営は楽しみであり、採算は考えてない」
などなど、色々です。
 かつて、私が若い頃、月によっては赤字、トータルでトントンくらいだった教室運営をやめなかった理由は、「指導しているという事実を手放したくなかった」というのが正直なところでした。

【4】支出を抑えないとキビシイ

 会社や店舗の経営で、一番お金がかかるのが、場所代と人件費です。
 花の教室の場合、助手や事務員が必要になるのは、相当大きな教室になってからですので、人件費は最初は考えなくてもいいと思いますが、もしも「助手・事務員を頼もう」と思うなら、本当に居ないと困るような状況が発生してからで良いでしょう。小さな花の教室は、支出を抑えていかないとキビシイです。

 場所代が教室の経済を圧迫するのは、上の項にも書きました。可能であれば、場所代をかけずに運営することを考えましょう。
 教室が小さいうちは、自宅の一室とか、家族・親戚の家で空いている部屋を拝み倒して使わせてもらうとか。
 少し教室が大きくなってきたら、花屋の二階を無料で借りるとか。思い切って、カルチャーセンターに営業をかけ、「自分の教室の生徒を全員引き連れてカルチャーに入らせて」と交渉し、自宅教室をカルチャーの一講座に移動させるとか(生徒さんたちがそれで納得してくれればだけど)。

【5】雇われ講師……カルチャー講師の年収を試算

 上の項でカルチャーセンターの講座に触れたので、カルチャーで教える先生など、講師として招かれて講師ギャラをもらうタイプの年収も試算してみます。

 カルチャー講師の収入は、各カルチャーセンターにより異なりますが、業界標準で、受講料の3〜4割くらいと言われています。(固定給のカルチャー講師は聞いたことが無いので、多分世の中に無いんじゃないかと思っています)
 受講料は、各カルチャーセンター・各講座でかなり異なります。月1レッスンの講座もあれば、月4レッスンの講座もありますし、講座の「格」もあるので試算するのが難しいのですが……まあとりあえず、ここが大体最低ラインかなと思う金額で、生徒は10人、受講料の35%をもらうものとして、まずは月収を試算してみましょうか。

●2000(レッスン料)×10(生徒数)×0.35=7,000円
 これを年収にすると、7,000×12ヶ月で、84,000円。当然、これでは生きられませんが、月のレッスン料が2,000円というのは、月1レッスンの金額と考えられるので、年間12日の稼動ならこれで当然です。
 月のレッスン料が、5,000円だとすると、下のようになります。

●5,000(レッスン料)×10(生徒数)×0.35=17,500円
 これを年収にすると、17,500×12ヶ月で、210,000円。5,000円のレッスン料だと、月に二回は開かれている講座でしょう。
 やっと6桁の、収入らしい数字になってきましたが、到底生活できる金額ではありません。

●10,000円(レッスン料)×10(生徒数)×0.35=35,000円
 年収にすると、35,000×12ヶ月で、420,000円。レッスン料が10,000円の大台に乗って、やっとこの金額。正直、月々で見ればお小遣いレベルの金額です。

 厚労省によれば、2016年大卒女子の初任給の平均は、197,200円とのことです。この金額を、カルチャーの10,000円レッスンで稼ごうと思うと、下のような生徒数が必要です。

●10,000円(レッスン料)×56(生徒数)×0.35=196,000円
 56人! 56人集まるカルチャーなんて、私は知りません。月に10,000円かかる講座ならなおさらです。10人集まるカルチャーを、5〜6箇所持てばいいじゃない、という計算も成り立ちますが、週の曜日のほとんどをカルチャーで抑えられている先生なんて、私は会ったことありません。それに、今日び、カルチャーといえども、10人も集まる講座は少ないのです。

 思っているほど、カルチャー講師の実入りはいいわけじゃないことがお分かりでしょう。カルチャー講師だけで暮らしていける花の先生は、全国で一人もいないだろうと私は思います。
 それでも、カルチャーに入れたらいいなと思っている先生はたくさんいて、それは、
「場所代がかからない」
「基本的に、ギャラをもらうだけで出て行くものは無い」
「個人では打てないレベルの宣伝を、カルチャーセンターがしてくれる」
「肩書きとして、悪くない」
などの理由からです。

【6】雇われ講師……部活・サークルの講師

 部活やサークルに招かれて教えるという講師のスタイルもあります。
 しっかりとした収入にすることを考えるなら、会社や学校の部活・サークルで継続的に教えるほうがいいです。単発の講座に招かれるのも悪くはないですが、それだと本当にお小遣い程度の収入です。

 学校や会社は、どういう計算でギャラを出すかが個々でかなり違います。
 月謝制のところ、部員の数×固定金額で算出しているところ、時給計算しているところ、月額が固定されているところ、年俸制のところまであります。

 実は、部活・サークルの講師ギャラに関しては、「このくらい」という標準が読めないので、申し訳ないですが、私には試算ができません。
 でも、「部活・サークル講師」だけで食えるのかといわれれば、「おそらく、食えない」と思います。根拠は、「この会社稽古だけあれば安泰だ」「この学校の華道部が、私のメイン収入なのよ」と言っている人(言わなくても、多分そうなんだなと推察できる人)を見たこと無いからです。
 無根拠の推測でいいなら、「ほとんどの人は年に6桁じゃないかな」と思います。7桁行く人がいるとすれば、他流・他のスクールにも名が知られているような業界有名人、もしくは一般の人が顔を知っているような、マスコミ的有名先生だと思います。

【7】こんなにうまくはいかないけどネ

 上で試算してきたように、花の教室だけで、世間並みの年収を得るのは難しいです。私が思うに、お金になるかどうかだけの話なら、
「その辺のコンビニでバイトしたほうがずっといいですよ」
と申し上げたいです。

 しかし、夢の無い話だけしているのもさびしいので、これだけ稼動したら世間の収入に迫れる、という「超うまくいったパターン」を考えてみることにしましょう。

 まず、月曜日は自宅で教室を開きます。生徒さんが5人で月謝6,000円だとして、年に360,000円の収入。
 火曜日は、どこかに教室を借りましょうか。生徒さん10人で、月謝6,000円。幸い交通費はかからず、場所代のみ月に12,000円かかるとすると、年に576,000円の収入。
 水曜日は、会社稽古を頼まれています。月に45,000円の収入(リアルだなあ)で、交通費も出してくれます。すると、年に540,000円の収入。
 木曜日は私立の学校の華道部で指導。時給計算で、月に12,000円ほど+交通費になる。年にすると、144,000円の収入。
 金曜日は、カルチャーの指導。月7,000円のレッスン料で、4割が自分のもの。生徒数10人だと、年に336,000円の収入
 土曜日は、平日には習い事ができない人のための稽古。外に教室を借ります。生徒さん10人で、月謝6,000円。交通費はかからず、場所代のみ月に12,000円かかるとすると、年に576,000円の収入。
……これらを合算すると、2,532,000円。
 花の教室で、これだけ儲けられたら御の字でしょ。こうはいかないけどね。花の教室で週6埋まることがまず無いけどね。
 そして、週6埋めるという「こうはいかない数字」をもってしても、20代の平均年収に届かないこの現実。「生徒数100人」とかにすれば超えられるけど、リアルに「各稽古場の人数は10人以内」で考えてみたらこうなりました。

 この数字を見てあきらめるのか、奮起するのかは、あなた次第です。


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