◆葬儀用の装花を作る仕事とは

花祭壇の仕事

 お葬式を飾ったり、式に使用される花を用意する仕事も花業界にはあります。お葬式に花屋の存在は重要でして、私の母の郷里では、「葬儀屋」というものはなくて、花屋が葬儀を仕切っています。

 世の中には、葬儀用花を専門的に請け負って成り立っている花屋さんもあります。また、普通の花屋よりずっと大きな「生花部門」を持っている葬儀社もあります。そういうところに勤めると、斎場や店の奥でずーっと白い花ばかり扱っていることになります(最近は、なかなかカラフルな花も扱いますが)。
 葬儀の花だけで成り立つ仕事があるということは、要するに「葬儀は、お金になる」のです。ゆえに、そのための技術者も求められます。
 恐らく、最初から、「自分は葬儀専門の職人になろう」という思いで花業界に入ってくる人は少ないと思います(結婚式を専門にやりたいと思って入ってくる人は結構います)。しかし、葬儀花は大モノを作る腕を振るえますし、「心をこめて仕事をしたい」と考えている人には、打ち込む価値のある仕事です。
 ホトケさま関係の仕事はエンギワルイ……と考える人には明確に向かない仕事ですので、そういう方はやめた方が良いでしょうが、その論法で「結婚式の花業務よりも、お葬式の花業務のほうが一歩劣る」と考えるのは、私は違うんじゃないかと思います。なので、このような記事を設けました。

 まずは、お葬式のスタイル別に、どんな花が使われるのか解説します。

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◇葬儀の花は、具体的にどんなものを作るのか:無宗教・仏教・キリスト教・神道の場合

【1】無宗教
 どの宗教でもない「無宗教」は、すごく簡単に言ってしまえば「お別れの会」です。なので、決まりごとが少なく、「何が必要」とも言いがたいのですが、まあ標準的に用意されるものを書いてみましょう。

●祭壇の花……祭壇を囲むように花をセットします。作成の経験が無くても、普通のフラワーアレンジメントを作りなれている人なら、人のやり方を見ればすぐ吸収できると思います。
●アレンジ数点……白を基調とした、お葬式らしいアレンジメントが1点から数点置かれることがあります。普通の「お供えアレンジ」が作れる人なら大丈夫です。
●献花用切花……ただの切花を用意するだけなので、花屋さんの手間はほぼありません。切りそろえてトレイなどに入れておくだけです。

【2】仏教
●祭壇製作……祭壇を囲むように花をセットします。作成の経験が無くても、普通のフラワーアレンジメントを作りなれている人なら、人の見ればすぐ吸収できると思います。「仏」は、最もオーダーの多いスタイルなので、花をセットしやすい枠が用意されていることがあり、最も簡単な場合は決まった場所に花を挿していくだけで済みます。
●お別れの花……棺を閉める前に、お別れに入れる花です。花をの花祭壇の花が使われることもあります。花屋さんの準備としては、花を短く切りそろえておくだけです。

【3】キリスト教
●祭壇の花……祭壇を囲むように花をセットします。作成の経験が無くても、普通のフラワーアレンジメントを作りなれている人なら、人のやり方を見ればすぐ吸収できると思います。
●アレンジ数点(無い場合もあります)……白を基調とした、お葬式らしいアレンジメントが1点から数点置かれることがあります。普通の「お供えアレンジ」が作れる人なら大丈夫です。
●献花用切花……ただの切花を用意するだけなので、花屋さんの手間はほぼありません。切りそろえてトレイなどに入れておくだけです。

【4】神道
●大榊……枝榊で製作します(これは、管理人自身が作ったことが無いので解説できません)。
●玉串・大幣……榊の枝に紙垂を付けるだけ。
●祭壇の花……祭壇を囲むように花をセットします。作成の経験が無くても、普通のフラワーアレンジメントを作りなれている人なら、人のやり方を見ればすぐ吸収できると思います。


 葬儀のお花を「作る面白さ・楽しさ」で語るのは、非常に不謹慎かもしれませんが、職人が喜んで作りたがるのは、自由がきく「無宗教」と、日本人がなんだかミーハー的にロマンを感じる「キリスト教」です。神道は、「とりあえず、一回経験したい」という人が多いです。「仏」は、別に不人気ではないのですが、絶対的に数多く受けることになるので、「面白い」とか、「やってみたい」と思う対象ではなくなります。ただし、数が多いだけに、色んなお客さんと出会うので、たまにびっくりするような高額や、超個性的な内容のオーダーを受けることがあります。

◇祭壇アレンジは、意外にも個性が求められる

 祭壇の花は、「決まった形を機械的に作るだけ」と思っている人が多いと思いますし、実際にそういう場合も多いです。しかし、意外にも、「人と違った風にしたい」というオーダーも多いのです。
 たとえば、
「故人は音楽が好きだったので、音楽をモチーフにして作ってくれ」
「登山が趣味なので、富士山の形に花を作って欲しい」
「辛気臭いのがキライな人だったので、ピンクと黄色を主にして欲しい」
など、いろいろなことを言われます。最近は、故人が生前に「こういう祭壇にしたい」と明確に指示した遺言を遺している場合もあり、いっそ結婚式よりも個性的じゃないかと思うくらいです。
 というわけで、「葬儀は決まりきっていて、創意工夫の余地は無い」と思うのは間違いです。また、個性的な葬儀花は、結婚式に負けないくらい「良い式になった。ありがとう」と言われることもあるのです。

◇今日びの葬儀は、白い花だけではない

 30年ほど前は、葬儀のお花の一部にでもピンクが入っていたりしたら、結構な勢いで「非常識」と言う人もいました。しかし、最近のお葬式は、白一色である方が珍しいと思います。また、昔はよくあった「菊と鉄砲ユリだけ」というのもほぼ無くなり、大体何らかの洋花が入っています。
 お供え花でもそうなのですが、これは一般の意識が変わってきた結果です。お供え花をオーダーする人と話をすると、「菊ばっかりじゃかわいそうだ」とか、「薄いピンクくらい入れてやってよ、そのほうがキレイだから」と言われることが多いのです。少しくらい華やかにしないと、故人もがっかりするんじゃないか、という思いが感じられます。特に、幼い女の子や、若い女性が亡くなったような場合には、「菊じゃないほうがあの子に似合う」と言われる方がいます。完全に、その花束を故人がかかえている姿を想像しての言葉だと思います。

 そのような意識が一般的である今日では、祭壇の花に赤のグロリオーサくらいは普通に使われます(もちろん、ポイント使いです)。胡蝶蘭も、昔は白一色ばかりで、リップがピンクのものすら避けられましたが、最近では全ピンクの胡蝶蘭もタブーではありません。人が思うより、葬儀の花の世界は華やかなのです。
 また、胡蝶蘭が出たついでに言いますと、胡蝶蘭を気前良く使う仕事がしたいなら、葬儀装花の仕事はおすすめです。結婚式よりも、葬儀の方が胡蝶蘭の消費が多いのではないかと思います。

◇葬儀の花を仕事にするなら

 葬儀の花仕事を得たいなら、葬儀場の近所をうろうろしてみると、結構簡単に「あ、ここの花屋でやってるな」という場所が見つかることが多いです。祭壇から下げてきたらしき花を始末している人の横なんぞに、「スタッフ募集」と貼紙がしてあったら、応募してみるのも手です。やはり、一般の花屋ほどの人気職ではないので、意外にその場で採用になるかもしれません。
 ネットで探すなら以下のようなサイトを見てみると、大体どんな仕事があるのか、報酬はどの程度かということがリサーチできるかと思います。

ジョブセンス……常時、一件くらいは葬儀関連花業務の仕事があります
シゴトinバイト  「生花 祭壇」
バイトEX 「生花 祭壇」
タウンワーク 「生花 祭壇」……常時、4〜5件はヒットします

 世の中の「葬儀関係」の仕事の中には、それが「葬儀関係」であるがゆえに(人が嫌がる仕事であるがゆえに)、一般の職よりもギャラが高いものがあるそうです。しかし、私が今まで見た限りでは、葬儀の花の仕事のギャラが、割高であるとは思えません。一般的な花屋スタッフと同程度ではないかと思います。ただし、儲かっている葬儀花屋や、葬儀社は、儲けをスタッフに還元していることも大いにあります。特に、地方では、一社がその地の葬儀を独占している場合もありますので、そのような企業に勤めれば高給が取れることもあるでしょう。

◇「経験者」でなくても大丈夫なのか

 葬儀生花のスタッフも、経験者が求められることが多いです。生花店勤務の経験があれば「経験者」とみなされますので、祭壇を作った経験が無くても大丈夫なことが多いと思います。祭壇を作る仕事は、大きめなアレンジ、少なくとも段花を作れるくらいの経験者だと飲み込みが早くてよいのですが、アレンジが普通に作れる人なら、できるようになるまでの道のりは、それほど遠くはありません。

 花屋の経験がまったく無い人が、「経験なしOK」の仕事に応募するときには、「がむしゃらに働きます」「どんどん動きます」ということをアピールすると良いです。葬儀の仕事は、「運ぶ」「組み立てる」「解体する」などの作業が多いので、何かというと座っているようなやつは喜ばれません。
 無事に採用されたら、最初は延々白菊の葉っぱ取りなどやらされると思いますが、それをつまらない仕事だと思うようならやめた方が良いです。単純な作業を、いかに効率よく、美しく仕上げるかを追求するような人が、大きな仕事を任されていきます。

【参考】こちらの記事で、葬儀装花(社員)の求人実例を挙げて解説しています→求人の実例をチェックする



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