◆クチナシ?  「踊らん哉」 (監督 マーク・サンドリッチ)

 RKOミュージカルの、アステア&ロジャース映画です。アステア&ロジャース映画はいつもそうですが、惹かれ合っている二人が、すんなり一緒にならずに、すったもんだのあげく、結局結ばれる、というストーリーです。全編にちりばめられたダンスと、ガーシュイン提供の楽曲が、ミュージカル的贅沢感満載で、好きな人にはたまりません。

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 フレッド・アステアの役どころは、バレエダンサーです。バレエの興行上、ロシア人と偽り、ペトロフと名乗っています。(全然ロシア人に見えない!)そして、ジンジャー・ロジャース演じる、舞台のミュージカルダンサー:リンダに一目惚れします。(ああ、いつものパターン!)
 ペトロフの猛アタックを受けたリンダは、最初は警戒していますが、やがて心を通わせるようになります。

 しか〜し。二人の恋路はどこまでもすれ違っていきます。
 リンダには、以前から「結婚してくれ」と言っている男性がいるし、ペトロフには、何年も前から付きまとっている元バレエ団員の女がいて(ペトロフは避けまくっている)、彼がリンダに近づこうとするのを妨害します。リンダは、本当はペトロフに心が動いているのに、女性の存在を見て(女が勝手に付きまとってるだけなのに!)やっぱり以前から自分を望んでくれている人と結婚しようと、婚約を決めてしまいます。

 ところが、芸能マスコミが「ペトロフとリンダ、極秘結婚!」などという記事を突如掲載したため、話はやっかいになります。
 ペトロフとしては、「結婚なんてしていない、しかし、最終的にそうなればいいと思っているのでマスコミは余計な茶々を入れるな」と言いたいところなのですが、寝室にペトロフとリンダが二人でいる写真が激写されてしまい(舞台用に作った人形を使い、カメラマンがでっちあげた写真)、「まだ何の関係もありません」と弁明することができなくなってしまいます。リンダは、婚約者に報道の真偽を詰問され、困ってペトロフの元を訪ねて来ます。
 さて、どうしよう?と悩んだペトロフとリンダは、「世間が結婚してると思っているなら、いっそ結婚しようか。そしてすぐに離婚して、それを正式発表すればいい」というトンデモない解決方法を思いつきます。
 そして、ホントに結婚しちゃうんですねえ。いいなあ、ミュージカルって。
 つかの間の「正式な婚姻関係」にあるリンダに、ペトロフはコサージを買って「花嫁に、お花を」と言って贈ります。リンダは、黙ってそれを受け取ります。

 このコサージが、多分クチナシだと思われます。
 映像では、非常に小さいのでわかりにくいのですが、花の形と、クチナシがコサージによく使われることから、間違いないと思います。

 しかし、私がにらんだところでは、どうやら造花を使ってますね。ペトロフは、これをコサージ売りのお姉さんから買うんですけど、お姉さんの持ってるお盆の上のコサージは、全部造花と見ました。
 コサージとともに、アステアが捧げた歌「They can’t take that away from me」(誰にも奪えぬこの思い)を、リンダは黙って聞き、その瞳は涙で揺れているように見えます。本当はあなたが好きだ、このまま別れたくないって、言えばいいじゃん!
 ま、最終的には、アステア&ロジャース映画は、ハッピーエンドの法則を覆すことはないので、二人は結ばれるんですけどね。
 欧米では、クチナシの花は、初恋の人に贈るものとされています。ペトロフとリンダの大人の恋は、どちらにとっても初恋ではなかったでしょうが、それほどに甘く切なかったということは言えるでしょう。


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