◆柱サボテン  男はつらいよ第16作「葛飾立志篇」 (監督 山田洋次)

 「男はつらいよ」のシリーズは、ほとんどのみなさんがご存知ですよね。
 では、「寅さんの夢シリーズ」というのはご存知ですか?
 これは、「男はつらいよ」の中で、オープニングが寅さんの見ている夢で始まる何作かを指すのです。このシリーズ、もうまったく笑っちゃいます。夢だけに、いずれも設定がものすごいんですねえ。
 今、思い出せるだけでも

◎寅さんが海賊……生き別れの兄さんに会いたい娘:チェリー(つまり、さくら!)が海賊:タイガー(寅!)と運命の再会
◎寅さんが偉い学者……柴又に出現した怪獣を、車寅次郎博士が撃退し、地球を守る(たしか、最後の手段が帝釈さまのお守りビーム)
◎寅さんが宇宙人……寅さんが、実は宇宙人で、UFOがとらやに迎えに来る(蛾次郎さんが、妙な泣き声の宇宙人役を怪演)
◎寅さんがガンマン……西部の町の酒場の歌い女(さくら)の前に、お尋ね者になった兄:寅さんが現れる
 ね! オカシイでしょ。
 最後の「ガンマンの夢」で始まったのが、このコラムで紹介する「葛飾立志篇」です。

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 柱サボテンというのは、柱のように、縦に長く伸びるサボテンのことです。寅さんが西部のガンマンの夢で見ているように、北米西部の砂漠地帯などではポピュラーな植物です。最近は、オブジェ的な面白さが注目され、ブティックやカフェなどにも飾られますし、「サボテンには電磁波を防ぐ効果がある」との説があって、オフィスにも置かれることが増えているようです。
 しかし、何と言っても乾いた砂塵の舞う荒野に、ポツン、ポツンと点在する力強い多肉植物の顔が、柱サボテン本来の姿なのです。でも、それなら「シェーン」とか「駅馬車」と一緒に紹介すればいいんじゃ……と思われることでしょう。
 ……私が、なんで寅さんで紹介するのかといいますと、「葛飾立志篇」の柱サボテンは、ほかでは決して見られないようなものだからなのです。
 寅さんの柱サボテンはね、ヘンなんです。本物の柱サボテンで撮影されていないんです。これがねえ、ただの円柱に棘が大雑把についているようなシロモノでして、子供の絵よりもひどいような作り物なんですよ。
 しかし、「山田洋次監督ともあろうものが、柱サボテンくらいそろえられなかったのか!」と思うのは間違いなのです。
 あれはねえ、わざとしょーもないサボテンに作ってあるんだと思いますねえ。
 要するに、寅さん自身が持っている「西部劇の中の柱サボテンのイメージ」など、あんなものだということです。
 実物をごらんになれば分かりますが、本当になっさけないサボテンなんですわ。寅さんの想像力の限界というものを見事に現した、すばらしい演出です!(あまりにもなっさけないサボテンなので、ぜひ皆さんにも見ていただきたく、ネット上で画像を探してみたのですが、見つけることができませんでした。残念!)

 映画の本編では、寅さんは学究の女性:礼子(樫山文枝)に恋をし、いつものように振られ(厳密に言うと、今回に限り、振られたと寅さんが勘違いしているだけなんだけど)、旅に出ます。しかし、この映画では、寅さんだけが振られるんじゃありません。礼子の恩師であり、礼子にプロポーズした田所教授(小林桂樹)も、その思いを受け入れられず、寅さんと共に旅に出ます。
 旅の途中で、寅さんは、また別の夢を見て、また別の女性に恋をするんだろうなあ。

◆DVD:「男はつらいよ 葛飾立志篇」



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