◆クスノキ  「となりのトトロ」 (監督 宮崎駿)

 もう20年近く前になりますが、私はこの作品を劇場で見ました。たしか、「火垂るの墓」と二本立てでした。今思えば、結構ぜいたくな二本立てだったのです。

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 私はこの映画を、かなり楽しみにして出かけました。こういう、訳分からん怪しいもの、好きなんです。
 見た結果、物語としては、ちょっとがっかり感が残りました。私の好みから見ると、どうも、トトロが物分りが良すぎるというか、優しすぎるというか、もの足らなかったのです。もっと計り知れぬ謎をもたらしてほしかったな〜という印象です。

 良かったと思うのは、お父さん役の糸井重里の声が、意外にはまっていたこと。
 もう一つ、これは圧倒的に良かったと思うのが、クスノキが一瞬にして芽吹いて大木に育つシーンがすばらしかったこと。

 主人公の姉妹、サツキとメイは、引っ越してきた土地で、不思議な「トトロ」と出会います。
 トトロって、「○○です」と言い切るのが難しいものでして、「妖怪」「妖精」「おばけ」「もののけ」の混合物で、結構いいやつ、くらいの理解でよろしいかと思います。
 このトトロに、サツキは傘を貸してあげました。するとトトロは、お礼にいくつかの木の実をプレゼントしてくれます。

 妹のメイは、この木の実を庭に撒き、芽が出るのを楽しみに待っていますが、なかなか生えてきてはくれません。
 ところが、ある夜、庭にトトロが現れて、メイが木の実を撒いた場所で、何やら気合い(?)を入れ始めます。すると、今まで影も無かった芽が、ぴょこん、ぴょこんと生えてきました。そこへ更にトトロがパワーを加えると、芽は、あっと言う間に天に向かって駆け上がり、一気に雲つくほどの大クスノキに変身をとげます。

 私は、この映画を見たときには、すでにいけばな業界の片隅の人間でした。
 そして、ああアニメーションて得だなあ、と思ったものです。
 だって、いけばなで、このような植物の「動的美」を表すことは、非常に困難ですからね。
 ムリ、とは言いませんが、所詮いけばなは静止物体ですから、「止まってるのに、あたかも動いているような美の表現」をしなくちゃなりませんから、そういう意味ではアニメーションに比べれば不利です。(でもこっちには平面の不利があるんだよ!と、アニメーション作家さんたちはおっしゃるでしょうね。結局どちらも簡単じゃないのですね)

 植物は生き物です。犬や猫のようにはいきませんが、生きている以上、「動き」はあるんです。その美によくぞ注目してくれたと思います。
 このシーンの直後、トトロは姉妹を連れて空に飛び立ち、大クスノキのてっぺんに座らせてくれます。宮崎映画名物、ヒロイン滑空のシーンに続くわけです。
 次の日の朝、目覚めた姉妹は大クスノキが消えているのを見て「夢だった…?」と思いますが、木の実を植えた場所に、待望の双葉が出現しているのを発見します。
 あれは夢だったのかな、それとも夢じゃなかったのかな?


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